完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
要さんに連れられて、厨房を出る。
長い廊下を歩きながら、さっきの出来事を思い出す。
要さん、いつから私のこと見ていたんだろう。
相沢さんに怒られてるとこもばっちり見られてたよね……
「相沢とは……今日が初めてですか?」
「え、あ……ちゃんとお話ししたのは今日が初めてです」
「そうですか」
そう言った後。
「馴れ馴れしいな」
と、呟いたのが聞こえた。
私……相沢さんに馴れ馴れしかったかな……。
気を付けないと。
しょっぱなから落ち込んでしまう。
屋敷の奥にある大きな扉の前で要さんが立ち止まる。
扉が開くと、そこは広いホールだった。
磨き上げられた床、大きな鏡、天井から下がるシャンデリア。
「ここは……」
「ダンスホールです」
中にはすでに一人の女性が立っていた。
背筋の伸びた、上品な雰囲気の人だ。
「お待ちしておりました、要様」
その人が軽く頭を下げ、にこりと微笑む。
「こちらが花音さんですね」
「はい」
「本日から社交ダンスを担当いたします、瀬戸内です」
「よろしくお願いしますっ」
慌てて頭を下げる。
瀬戸内先生は微笑みながら言った。
「要様はダンスがお上手ですから、花音様もすぐに覚えられると思いますよ。私より要様に教わった方が、きっと早いくらいです」
「え?」
思わず要さんを見る。
要さんは表情を変えずに言った。
「基本だけ教えてください、その後は私が見ます」
「承知しました」