きみが春なら
◇ ◇ ◇ ◇
彼を想ったまま
春が過ぎ
夏が過ぎ
やがて、秋が訪れた。
「チリドッグを一つ」
「はい」
厳しかった残暑もやっと和らいできたある日。一人で店番中、初老の男性の注文を受けた。素早く調理し手渡す。
「お待たせしました」
「あぁ。ありがとう」
感じのいい笑顔が、突然驚いた表情に変わる。
「そ、の時計……」
「え?」
男性は何も言わずに私の顔と手元を交互に見つめ、やがてふっ、と笑った。
「そういう事か。どこまでも憎い男だ……イーヴァン」
今度は私が驚く番だった。彼の名前を誰かの口から聞くのは初めてだ。動揺して言葉が出ない私に、男性は穏やかに語る。
「いつだったか、奴がこの店の紙袋に入ったサンドイッチを食べている時があったんだ。私には絶対分けてくれなかったよ。特別メニューなんだって言ってな」
「……っ」
「お嬢さんの手作りだったんだな。そりゃ特別な訳だ」
彼を想ったまま
春が過ぎ
夏が過ぎ
やがて、秋が訪れた。
「チリドッグを一つ」
「はい」
厳しかった残暑もやっと和らいできたある日。一人で店番中、初老の男性の注文を受けた。素早く調理し手渡す。
「お待たせしました」
「あぁ。ありがとう」
感じのいい笑顔が、突然驚いた表情に変わる。
「そ、の時計……」
「え?」
男性は何も言わずに私の顔と手元を交互に見つめ、やがてふっ、と笑った。
「そういう事か。どこまでも憎い男だ……イーヴァン」
今度は私が驚く番だった。彼の名前を誰かの口から聞くのは初めてだ。動揺して言葉が出ない私に、男性は穏やかに語る。
「いつだったか、奴がこの店の紙袋に入ったサンドイッチを食べている時があったんだ。私には絶対分けてくれなかったよ。特別メニューなんだって言ってな」
「……っ」
「お嬢さんの手作りだったんだな。そりゃ特別な訳だ」