冷遇令嬢、最恐軍医に嫁ぎました~大正深愛綴り~

「では、私も……あなたのカルテに書き記してもいいですか?」
「……君がか?」
「はい。寝言の言葉や、子猫は触れないのに、『君は子りすだ』という割には、躊躇いなく触れているので、この傾向は今後も要観察すべきかと。私だけが知ってること、たくさん記録していきたいです」

 勇心は一瞬、言葉を失ったように紫乃を見つめた。そして、ふふっと笑みが零れる。

(小動物は苦手だが、どうしても……君には触れたくなってしまう。これを『愛』というのだろうか?)

 勇心はわずかに目を細めて、彼女の手をぎゅっと握り返す。

「……それは困るな」
「どうしてですか?」
「君に観察されると、俺の交感神経が昂進して、正常な判断ができなくなる」
「……つまり、どういうことですか?」
「君は、俺にとって……慢性的な幸福依存の原因だ。いや、これは医学的事実だ。君は俺の恒常性を乱す、唯一の存在だからな」
「……っ、ふふっ……!」

 思わず吹き出した紫乃は、顔を赤らめながらも、彼の胸に体を預けた。

(この人は、やっぱり少しずれてる。でも、そのずれ方が、堪らなく愛おしい。私だけが知っているこの人の“ずれ”を、これからもそっと受け止めていきたい)

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