冷遇令嬢、最恐軍医に嫁ぎました~大正深愛綴り~
その夜。
二人は再び、寝室の灯りの下で向かい合っていた。
湯上がりの紫乃の髪からは、まだ仄かに湯の香が漂っている。
勇心は、手帳のような小さな冊子を取り出した。
「……紫乃、少し話がある」
「はい?」
「俺と君の健康記録を、纏めてみた」
「け、健康記録……ですか?」
紫乃は冊子に視線を落とし、小首を傾げる。
「ああ。初対面の時からの顔色、体温、声の震え方、食事の傾向など……全て記録してある。これは、君専用のカルテだ」
「……っ、えっ、ええっ!?」
紫乃は少し驚いて、目を丸くした。
「当然だ。軍医として、観察は基本だ。だが、……最近、記録に異常が出ている」
「異常……?」
「俺の心拍数が、君の笑顔を見るたびに上昇する。君の手に触れると、手のひらが発汗する。これは明らかに、君の影響による自律神経の変調だ」
紫乃はぽかんと口を開けたまま、勇心を見つめた。