音のない世界で、君に恋をする。
prologue
あの日、世界から音が消えた———
最初は、治ると思ってた
治療すればまた音は戻ると、信じて疑わなかった
でも———
目の前で誰かが笑っているのに
何も聞こえない
口が動いているのに
声が届かない
ざわめきも
風の音も
自分の鼓動さえ
遠い
世界が水の底みたいに静かだった
怖い
と思うより先に
私は気づいてしまった
ああ、もう戻れないんだ
———私の世界は音を失った
そしてきっと
あの日から
私は少しずつ変わっていく
まだ知らなかった
この静かな世界で
誰かを好きになるなんて
< 1 / 45 >