音のない世界で、君に恋をする。
chapter 1
静かな世界
春の陽射しは、穏やかだ。
校門の前で揺れている桜は、たぶんざわざわと音を立てている。
私は、それを想像する。
———もう、聞こえないから。
高校の入学式。
真新しい制服。
まだ硬いスカートの折り目。
白いブラウスの襟元が、少しだけ息苦しい。
みんなの口が動いている。
「久しぶりー!」
「クラスどこ?」
「写真撮ろ!」
きっと、そんな言葉。
でも、私の世界は静かだ。
しん、としている。
静かすぎて、自分の鼓動だけが響いている気がする。