音のない世界で、君に恋をする。
「夜に一人で歩くな」
なるべく伝わりやすいように、ゆっくり喋る。
【気分転換したくて】
そう返す彼女に、ちゃんと伝わっていた、と少し安堵した。
あのナンパ野郎に少しイラついていた俺は、タバコを咥えた。
じっと見つめる彼女に、そういえばまだ名前を聞いてなかったことに気づいた。
【白石澪】
そう書かれた文字を見て、妙に納得した。
白くて儚い彼女にぴったりの名前だった。
タバコを吸って煙を吐くと、彼女が少しだけ嫌そうな顔をした。
だけど、聞いても嫌いじゃないと言い張る。
目が不自然に泳いでいて、明らかに嘘だと分かった。
その顔を見て、すぐに火を消す。
帰ろうとすると、少しだけつらそうに顔をしかめていた。
そんな彼女がやっぱりほっとけなくて、だけどここにずっといるのもなんか嫌で、溜まり場に連れていった。
あいつらなら、澪を受け入れてくれると思ったから。