花束に囲まれた君が残したもの。
【結びの中で】

ー蟠りの先にー

週明け、僕は緊張して学校へ向かった。
木漏れ日が揺れる道並を1歩1歩踏みしめて歩いていく。

気持ちの整理はつけてきた。
ただ他の人はそうとは限らない。
そこの溝をどう埋めるか。
昨日何パターンも試行錯誤した。

「何かあっても僕が日常を取り戻す。」
そのつもりでいた。

教室の前に着くと僕は一呼吸して扉を開けた。
窓際にはまずツユちゃんがいた。

「…っおはよう!」
「おはよう。ツッキー。」

ツユちゃんは笑って言った。

ツユちゃんの髪の毛はいつもの少し青みがかった黒色だった。
ウイッグだろう。
 
「…あのさ、今日、山小屋行く?」
僕はそっと聞く。

「特にそのつもりはなかったけど…ツッキーが行くなら行くよ!」

ツユちゃんは 僕の意図をわかってくれたのか、山小屋に行くという選択肢を選んでくれた。

僕の作戦。
山小屋に誘う。
僕らの原点である場所から離れてしまっては日常に戻れないと思ったから。

ハギと過ごした場所であるあの場所に行くのは辛い気持ちもある。
ただあえて誘おうと思った。
あの日常を繋ぎ止めるためにも。

それに、色んな人に誘われて行っていた山小屋。
僕から誘ったことがなかったなと思った。

「今日は僕のMV作りを手伝って欲しいんだ。」

「…MV作り?」
聞いてきたのは近くに座っていたクワだった。

「実はさ……夏休みに頼まれてたことがあって。」

ーーー

実は夏休み1回だけハギが僕の家に来たことがあった。
ツッキーのことだから家にいるだろうって迷いもなく来たってぬかしてたけど…

そんなハギを僕の部屋に招くと、ハギは部屋の真ん中にあるテーブルにひとつCDを置いた。

「急に来て悪いんだけど…お願いがあって来たんだ。」
と前置きをし、僕を見た。
 
「MVを作るのを手伝って欲しいんだ。この曲の。」
ハギの目は真剣だった。
 
「MVって…音楽と一緒に流れてる動画のことだろ?作ったことないんだけど…」

「君の撮る動画や写真。気づいてるか分からないけど、見ててすごい感動するんだよ。その写真や動画を使わせて欲しい。」

ハギは熱心に僕の写真について語った。
こんなに褒められるとは思ってなくて少し照れくさかった。
 
「あ、ありがと…いいよ、MV作ろう。手伝うよ。」

褒められて嬉しくないわけが無い。
それに僕はハギが作る曲が好きだ。
だから僕でもなにかできることがあるならそれはとても光栄な事だ。

僕らはそのあと、ハギのCDに入ってる曲を聴いた。
新しいデモ曲が3曲。

タイトルは「青春へのホイッスル」「背徳の花火」そして「流星群」だった。

僕らは音楽を聴いたあと、どんな動画にするかラクガキを書いた。(これをプロットと言うらしい…)

僕らは肌寒くなったら、一緒にコタツに入りながらのんびり作ろう。
それまではお互い準備の時間だね。
そう約束していた。

ーーー

僕はこの出来事を話すと机の上にCDを1枚置いた。
ツユちゃんとクワはCDを覗き込んだ。

「これまだ俺知らないやつだ。」
「私も…」

「ハギがさ、目覚めた時に見せたいなって思ったんだ。」
僕もそっと呟いた。

「私にも手伝わせてください!」
勢いよく話しかけてきたのはシーちゃんだった。

責任を感じてしまっているのだろうか。
僕を真剣な眼差しで見る。
僕は少々驚いたが、微笑んで答えた。

「もちろん。」
 
「私も手伝う!」
そして、最後に声をかけてきたのはヒマだった。

いつの間にか僕らは教室の片隅に集まっていた。
僕らは顔を見合せる。

「それじゃあ、今日の授業後、山小屋集合だ。」

僕が繋ぎ止めるための作戦はあくまで形だけだろう。
心までは僕にはどうしようもできない。
なにせ僕らが最後に会ったのはあの病院なんだ。

僕らには時間が必要だ。

けれどわかってた上でいきなり誘った。
ここで各々が時間を過ごしてしまっては元には戻らない。そう思った。
結局ハギの力を借りていることになってる気もするけど…とりあえずこれでいいと信じたい。

「大丈夫…」

僕は日差しの入る廊下を見ながら自分を納得させるように唱えた。
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