花束に囲まれた君が残したもの。

ー花に囲まれてー

僕らは病室の前にたどり着くと、少し息を整えた。
僕はみんなを見たあと扉に手をかけて、ゆっくり開けた。

夕暮れ時の霞む太陽の光が差し込み、窓は開いていていた。カーテンがゆっくり揺らぐ。
少し部屋を進むとそこには妹さくらさん、車椅子に乗ったツユちゃん、

そしてベットに座るハギがいた。

「ハギ!!」「ハギくん!!!」
 
僕らは一斉にハギの周りに集まった。

シーちゃんやヒマは泣きじゃくり、僕やヒラはそんな姿をすこし離れながら見ていた。
ユリちゃんはベットの袖に手をかけ、腰を落としていた。

「…ただいま、みんな。」

ハギが目に涙を浮かべながら笑顔で言った。
そしてそっとシーちゃんの頭を撫でた。

「…ごめんなさい。ごめんなさい。」

シーちゃんが泣きながら謝り続けていた。
ずっと罪悪感と戦ってきたんだろう。

「もう大丈夫だから泣かないで。」

ハギが励ますけれどシーちゃんは止まらなかった。するとユリちゃんがシーちゃんの近くに来て、両頬を少しつまんだ。

「…?!」
「笑いなさいよ!」

ユリちゃんがシーちゃんを見つめながら言った。
そう言ってるユリちゃんも涙で溢れていた。

「幸せにしないなら許さないって言ったでしょ。嬉しい時は笑ってなさいよ!」

ユリちゃんが唇を噛み締めながら言った。
負けじとシーちゃんもユリちゃんの両頬を優しくつまむ。

「ユリちゃんだって!一緒でしょ!」

その様子を見ていちばん驚いていたのはハギだった。

「ふ、はははっ。」

ハギはお腹を抱えて笑った。
そんな姿を見て安心したのか、つられるように僕らも笑った。
 
部屋は温かさに包まれていく。

一人一人の祈りが合わさり、束になり、最後には美しく彩る。
まるで花束のように。

「なんだかみんな変わったね。また話し聞かせてよ。僕が眠っている間にどんなことがあったか。」
ハギは笑顔で僕らに言った。

ハギにはどんなふうに僕らが見えているのだろうか…悩んだり不安になったり怒ったり。
色んな感情の中で生まれた今の繋がりはきっとほどけることのない一生のものだろう。
 
僕らは日が暮れるまで少し話をした。
沢山話したいことはあるけれど、こういう時に限ってどうでもいい事ばかり話してしまった。
ヒマがクリスマスにハシゴから落ちてきて重たかったこととか。

「ツユちゃん、なんで車椅子乗ってるの?」

ユリちゃんが会話の途中でそっとツユちゃんに聞いていた。

ツユちゃんはヒラも呼び、ようやく打ち解けた。
ここで知らないのはこの2人だけらしい。
その様子を見て僕らは少し黙り込んでしまった。

2人の呆然とする姿は、まるで自分を見ているようで辛かった。

「ハギの次は私。大丈夫どんな治療だって頑張るよ。」
ツユちゃんは笑って言った。

少し沈黙の時間が続いた。
  
「そういえば…クワくんは…」
気づいたのはヒマだった。
  
「連絡したんだけど…。」
シーちゃんとツユちゃんが同時に言う。

そう話していると病室の扉が開いた。
そこにはいつもの看護師さんがいた。
服や髪の毛が少し乱れていた。

「ツユさん、ここにいたんですね。病室に戻ってください。みなさんも。これからハギさんは検査がありますので。」
 
みんな名残惜しそうにハギを見る。
 
「…らしいから。ごめんね、みんな。また来てね。」
ハギは優しく言った。

僕らは渋々病室を出た。
病室の扉を閉めた時、ハギの顔はどこか怯えているように見えた。

病室を出た僕らは、外も暗くなっていることだし、解散する流れになった。
ヒラはシーちゃんとユリちゃん、僕はヒマを送っていくと言って別れた。

「帰ろう。」
ヒマは僕に声をかけてきたが、全く気づかないくらい 僕は考え事をしていた。
何か嫌な予感がよぎっていた。

「ごめん、ちょっと病院戻るわ。ヒラと帰ってくれ。」
僕はそう言ってかけだそうとすると、ヒマに腕を掴まれた。

「私も行く。きっと何か考えてるんでしょ。」

そういうヒマの目は凛々しく、光って見えた。
僕らは急いで病室へ向かった。
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