意地悪な副社長に狂うほど愛される

告白

なんで、こんなことにーー

俺は目を覚まさない彼女の手を握りしめた。
病室で2人きり。
ようやく会えた彼女は未だに眠ったままだ。

お願いだーー目を開けてくれ

辺りはすっかり暗くなっていた。
俺はどのくらい、こうしていただろう。

その時、彼女の鞄からスマホのバイブ音が聞こえた。
先程から何度も鳴っている。

俺は仕方なく彼女の鞄を漁ってスマホを取り出し目を見張った。
スマホには『御堂社長』と表示されている。

「どういうことだ」

俺は通話ボタンを押して耳につけた。

「おい! お前! 駿を何処にやった!」

何も言わずとも父の怒号が聞こえた。

「お前が駿といるのは、わかってる! 何処にいる! さっさと駿に変われ!」

なるほど……そういうことだったのか。

「おい! なんとか言え! もう駿に会わないと約束しただろ! こっちには契約書もある! 約束を守らないならお前はクビだ! 用意したアパートからも出て行け!」
「父さん」
「駿! お前! 佐伯家との顔合わせを」
「結婚しません」
「何を言ってる」
「もう社長の座もいりません」
「お、おい! 駿」

俺は通話を切り電源を切った。
そして寝ている彼女を見つめる。

彼女が車に轢かれた時、自分の心臓が壊れたかと思った。
スマホを握る手に力がこもる。

彼女を失う恐怖ーー

これほどまでに鮮明に感じるまで、彼女のことが俺の中で大きくなっていたとは思わなかった。

「俺のせいだ」

俺はもう1度、彼女の傍にしゃがみ、彼女の手を握った。

「お願いだ、目をあけてくれ。好きだと言わせてくれ」

彼女の手をぎゅっと握り、その手に口づけた時だった。

「ふく……しゃ……ちょう?」

俺は顔を勢いよくあげ、彼女を見た。
うつろな表情の彼女がこちらを見ていた。

医者を呼んで彼女を診てもらい、「もう大丈夫です」と言ってもらっても俺は心配で、どうにかなりそうだった。
しっかり検査してほしいと、明日、再度、脳の検査をしてもらうことになった。

「副社長」
「ん?」
「手」
「手?」
「ちょっと離して貰えますか?」
「嫌だ」
「え」
「もう離したくない」

彼女は俺から顔を反らした。

「な、なんで、ここにいるんですか」
「それはお前が」
「副社長には関係ないじゃないですか、私がどうなろうと」

彼女の目には涙が浮かんでいた。

「関係なくない」
「あなたは結婚するんでしょ」
「しない」

彼女が驚いたようにこちらを見た。

「しないって、そんなわけ」
「俺は……お前が好きだ。宮木あゆ美」

彼女は言葉を失っていた。
あまりにも驚きすぎてか、涙も引っ込んだようだった。
その顔がおかしくて思わず笑みがこぼれた。

「何を笑って! ふざけないでください! 副社長が私のことを」
「人の感情を否定するのか? キミは」
「それは」
「今更、こんな告白して俺の恋人になってくれとは言わない。キミには酷いことをいっぱいしたのは事実だ。嫌われても仕方が無い」
「そうですね」
「でも聞いてくれ」

握っていた手がピクッと動いた。

「俺はキミが高校生の時にキミに恋をした」

彼女の目が見開かれた。

「あの時、俺は人生なんか頑張っても無駄だと思っていた。兄だけが得をする世界が御堂家だった。でも、とある女子高生の言葉で、損得なんて、どうでもいいと思えた。御堂家のことも、どうでもよくなった。俺はあの日、自由になったんだ」

彼女を見つめる。

「それからはキミに再会するまで俺は無我夢中になった。結局、自由だけではダメで社長の座を手にしないと叶えられないものあった」

思わず笑顔になった。

「じゃあ私を本社に異動させたのは本当に……」
「ああ、俺だ。年内に社長になることは決まっていた。社長になってキミの前に現れて告白しようと決めていた」
「まさか、そんな」

彼女の頬が真っ赤に染まっていく。

「本当だ」

自分でも怖ろしいほど優しい声が出た。

「俺はキミ以上に思いが強い自信がある。そのくらい好きだ」

俺は彼女を見つめ、うまく笑えている自信がなかった。

「狂うほどキミのことが好きだ」

彼女がぽかんと口を開けていたので、少しからかいたくなった。

「まあ、まさか俺をAIにしていたとは思わなかったけどな」
「そ、そのことは! わ、忘れて下さい!」
「いや、忘れられない」

俺はわざとらしく彼女の顔を覗き込んだ。
彼女は下唇を噛んだ。

「その癖、やめたほうがいい」
「え?」
「下唇を噛む癖だ。俺のことを欲しがっているサインだとすぐにわかる」
「べ、別に欲しがってないです! 勘違いしないでください」
「そうか?」

顔を真っ赤にしてわかりやすい彼女は手を振りほどこうとしたので、ぎゅっと強く握った。

「あゆ美」

俺は彼女の熱い顔に触れた。

「愛してる」

彼女の瞳が揺れた。
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