意地悪な副社長に狂うほど愛される
「奈々子先生……」
「奈々子先生を責めないでほしい。俺が頼んだんだ」
啓太が困ったような表情で笑みを浮かべた。
「責めないよ、先生は副社長には連絡してないもん」
沈黙が流れた。
「はい」
奈々子先生はパチンと両手を合わせた。
「じゃっあ~荷物は私がもらうわね」
そう言うと私から段ボールを受け取り部屋を出て行った。
去り際に振り返って微笑む。
「ゆっくり2人で話なさい」
ドアが閉まり、2人きり。
お互いに気まずくて、なかなか話を切り出せずにいた。
「お前、会社、辞めたのか」
どうしよう。
嘘をつくべきか。
「副社長のせいか?」
啓太を見ると瞳に怒りを感じた。
「啓太が思っている理由じゃないの。私が逃げたのは」
「どういう意味だ?」
「私、あの人のことが好きなの」
「は?」
啓太は呆れたような微かな笑いを含んだ息を吐き出した。
「好きになったのは8年前だった」
「8年前!?」
私は頷く。
「彼を追って、会社に入ったの」
「まさか、そんな」
「でも、ずっと遠い存在だったの。だけど1ヶ月前、彼と話すきっかけが出来て」
「それで愛人になったのか」
啓太の声は冷たかった。
私は強く拳を握った。
「知らなかった。婚約者がいるなんて」
啓太はため息をつくだけだった。
「だけど好きになったのは私。彼は私のことを好きじゃない」
「それっておかしいだろ!」
「副社長とは付き合ってない!」
「え?」
「私が一方的に好きなだけ」
沈黙が流れた。
言葉にすると、余計に悲しくなった。
空しかった。
私はこんなにも、彼に狂っているのかーー
涙がこぼれた。
「俺じゃダメなのか?」
私は驚いて啓太を見た。
啓太の目に涙が溜まっていた。
「俺はお前のことが、ずっと好きだった」
「啓太……」
「8年どころじゃない! ずっと前からお前が好きだった!」
瞳から涙が零れ落ちたのを見た。
「俺だったら、あゆ美を泣かせたりしない。大切にする」
啓太の言葉は力強く、嬉しかった。
しかしーー
「ごめん」
すると啓太が笑った。
「即答かよ」
「……」
「なんだよ」
そういうと啓太は力が抜けたように肩を落とした。
「副社長のことになると、そんなに考えるくせに俺のことは即答なのか」
「ごめん」
「副社長は結婚する。確か今日、両家顔合わせだと社員が噂してた」
「……そうなんだ」
啓太は、ようやく優しい笑みを私に向けてくれた。
そして流れた涙を乱暴に袖でふく。
「恋人はダメでも幼馴染みとしては、いいよな?」
「私にそんな資格は」
「おいおい、それもダメなのか?」
「啓太はいいの?」
「俺がそうしたいの」
「啓太……」
「だからさ……せめて俺の前から消えないでくれよ」
眉を下げて微笑む啓太の顔に胸が締め付けられた。
新しい連絡先を啓太に伝え、奈々子先生に挨拶を済ませたあと私たちは施設を出た。
「送っていくよ、俺、車で来てるから」
「ありがとう」
「そういえば腹も減ったな。食事でもしていくか?」
会社にまだ勤務していることを啓太に伝えた方がいいだろうか。
「あのね、啓太」
「ん?」
施設を出た時だった。
「そんな」
冷たいものが背筋を駆け下りた。
啓太も私の視線の先に気がついた。
道路を挟んで反対側に車から出てくる副社長の姿があった。
「あのやろっ」
そう言って啓太が副社長に向かって道路に出た時だった。
凄まじいクラクションの音。
「啓太!」
私は身体が勝手に反応して啓太を押していた。
同じ瞬間、激しいクラクションと共に身体に重たい鉄の塊がぶつかった。
「あゆ美!」
アスファルトの地面に叩きつけられた。
啓太の叫ぶような声を最後に意識を失った。
「奈々子先生を責めないでほしい。俺が頼んだんだ」
啓太が困ったような表情で笑みを浮かべた。
「責めないよ、先生は副社長には連絡してないもん」
沈黙が流れた。
「はい」
奈々子先生はパチンと両手を合わせた。
「じゃっあ~荷物は私がもらうわね」
そう言うと私から段ボールを受け取り部屋を出て行った。
去り際に振り返って微笑む。
「ゆっくり2人で話なさい」
ドアが閉まり、2人きり。
お互いに気まずくて、なかなか話を切り出せずにいた。
「お前、会社、辞めたのか」
どうしよう。
嘘をつくべきか。
「副社長のせいか?」
啓太を見ると瞳に怒りを感じた。
「啓太が思っている理由じゃないの。私が逃げたのは」
「どういう意味だ?」
「私、あの人のことが好きなの」
「は?」
啓太は呆れたような微かな笑いを含んだ息を吐き出した。
「好きになったのは8年前だった」
「8年前!?」
私は頷く。
「彼を追って、会社に入ったの」
「まさか、そんな」
「でも、ずっと遠い存在だったの。だけど1ヶ月前、彼と話すきっかけが出来て」
「それで愛人になったのか」
啓太の声は冷たかった。
私は強く拳を握った。
「知らなかった。婚約者がいるなんて」
啓太はため息をつくだけだった。
「だけど好きになったのは私。彼は私のことを好きじゃない」
「それっておかしいだろ!」
「副社長とは付き合ってない!」
「え?」
「私が一方的に好きなだけ」
沈黙が流れた。
言葉にすると、余計に悲しくなった。
空しかった。
私はこんなにも、彼に狂っているのかーー
涙がこぼれた。
「俺じゃダメなのか?」
私は驚いて啓太を見た。
啓太の目に涙が溜まっていた。
「俺はお前のことが、ずっと好きだった」
「啓太……」
「8年どころじゃない! ずっと前からお前が好きだった!」
瞳から涙が零れ落ちたのを見た。
「俺だったら、あゆ美を泣かせたりしない。大切にする」
啓太の言葉は力強く、嬉しかった。
しかしーー
「ごめん」
すると啓太が笑った。
「即答かよ」
「……」
「なんだよ」
そういうと啓太は力が抜けたように肩を落とした。
「副社長のことになると、そんなに考えるくせに俺のことは即答なのか」
「ごめん」
「副社長は結婚する。確か今日、両家顔合わせだと社員が噂してた」
「……そうなんだ」
啓太は、ようやく優しい笑みを私に向けてくれた。
そして流れた涙を乱暴に袖でふく。
「恋人はダメでも幼馴染みとしては、いいよな?」
「私にそんな資格は」
「おいおい、それもダメなのか?」
「啓太はいいの?」
「俺がそうしたいの」
「啓太……」
「だからさ……せめて俺の前から消えないでくれよ」
眉を下げて微笑む啓太の顔に胸が締め付けられた。
新しい連絡先を啓太に伝え、奈々子先生に挨拶を済ませたあと私たちは施設を出た。
「送っていくよ、俺、車で来てるから」
「ありがとう」
「そういえば腹も減ったな。食事でもしていくか?」
会社にまだ勤務していることを啓太に伝えた方がいいだろうか。
「あのね、啓太」
「ん?」
施設を出た時だった。
「そんな」
冷たいものが背筋を駆け下りた。
啓太も私の視線の先に気がついた。
道路を挟んで反対側に車から出てくる副社長の姿があった。
「あのやろっ」
そう言って啓太が副社長に向かって道路に出た時だった。
凄まじいクラクションの音。
「啓太!」
私は身体が勝手に反応して啓太を押していた。
同じ瞬間、激しいクラクションと共に身体に重たい鉄の塊がぶつかった。
「あゆ美!」
アスファルトの地面に叩きつけられた。
啓太の叫ぶような声を最後に意識を失った。