意地悪な副社長に狂うほど愛される
「や、やめてください! 私はそんなつもりでは!」

私は手を振り払いソファから飛び跳ねるように立ち上がり副社長から距離を置いた。

「本当に?」

副社長は笑みを浮かべる。

「本当です」
「そうかなぁ」

そう言って副社長は長い脚を組んだ。

「こ、これはただのアプリで。確かに副社長です。でもそれは憧れで」
「へぇ~憧れてくれてるのか、光栄だな」

私はその瞬間、涙がじわっと溢れた。

「なぜ、泣いている」
「なんでもないです」

副社長が立ち上がり、私に近づいて来たので後ずさる。
しかしすぐに壁が背中に当たった。

「俺が怖いのか」
「そうではないです」
「じゃあ、なんだ」
「自分のやってしまった行動が恥ずかしくて」
「恥ずかしがることではない」

ちらと副社長を見ると射るような瞳をこちらに向けていた。

「AIなんかより俺の方がいいと思うぞ」
「え……」
「試してみる価値はあると思うが」
「試すって何を」

すると副社長は意地悪な笑みをまた浮かべた。
私の鼓動がさらに早くなる。

「キミが恥ずかしいと言っている、その欲を本物の俺に向けてみたいとは思わないか?」
「そんなこと出来ません!」
「なぜだ」
「あれはげ、ゲームだからです! 現実ではないお遊びです」
「ほぉ」

副社長はさらに距離を詰めた。

「じゃあ俺というゲームのプレイヤーになってみてはどうだ?」
「プレイヤー?」
「そうだ。AIじゃできないことを味合わせてやるよ」

私は至近距離の副社長の顔を魂が抜けたように見つめた。

試してみたい――
この人に狂わされてみたい――

そんなことを心のどこかで望んでいる。
そんな自分がすごく恥ずかしくて愚かで情けなかった。

「キミが飽きたらやめればいい、プレイヤーはキミなんだから。選択権はキミにある」
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