第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
陛下直属の騎士団は、一瞬だけ動きを止めた。
だが、それでも剣先は下がらない。
額に汗を浮かべ、喉を鳴らしながらも、
彼らは“王命”という鎖に縛られていた。
俺が――
本気で剣を構えた、その刹那。
「……おいおい」
低く、空気を震わせる声が廊下に落ちた。
「次期国王に剣を向けるとはな。
いくら陛下の命令でも、度が過ぎている」
足音が近づく。
ゆっくりと、しかし一歩ごとに場の空気が締め上げられていく。
その存在感だけで、騎士たちの背筋が強張るのがわかった。
振り向くと――
そこに立っていたのは、アランだった。
「……兄上」
胸の奥が、ひどく痛む。
ずっと嫌われていると思っていた。
いや、そう思い込むことで、自分を守っていただけなのかもしれない。
「で、ですが……!」
騎士の一人が声を上げるが、アラン殿下は一歩前へ出て、
静かだが絶対に逆らえない声音で命じた。
「下がれ」
その一言で、空気が変わった。
騎士たちは息を呑み、剣を下げ、道を開ける。
アラン殿下は俺を見据えた。
「ディラン」
幼い頃、何度も呼ばれた声。
胸が詰まる。
「行け。
……間に合わなくなる」
短い言葉。
だが、その裏にある焦りと、俺を信じる強さが痛いほど伝わった。
「……ありがとうございます」
深く頭を下げ、踵を返す。
その瞬間――
「ディラン」
呼び止められ、振り返る。
アラン殿下はまっすぐ俺を見ていた。
「気をつけろ。必ず生きて戻れ」
時間が止まったようだった。
俺の身を案じた言葉。
ずっと嫌われていると思っていたから。
胸の奥が熱くなる。
俺はただ走り出した。
兄の温かな視線を背に受けながら。
だが、それでも剣先は下がらない。
額に汗を浮かべ、喉を鳴らしながらも、
彼らは“王命”という鎖に縛られていた。
俺が――
本気で剣を構えた、その刹那。
「……おいおい」
低く、空気を震わせる声が廊下に落ちた。
「次期国王に剣を向けるとはな。
いくら陛下の命令でも、度が過ぎている」
足音が近づく。
ゆっくりと、しかし一歩ごとに場の空気が締め上げられていく。
その存在感だけで、騎士たちの背筋が強張るのがわかった。
振り向くと――
そこに立っていたのは、アランだった。
「……兄上」
胸の奥が、ひどく痛む。
ずっと嫌われていると思っていた。
いや、そう思い込むことで、自分を守っていただけなのかもしれない。
「で、ですが……!」
騎士の一人が声を上げるが、アラン殿下は一歩前へ出て、
静かだが絶対に逆らえない声音で命じた。
「下がれ」
その一言で、空気が変わった。
騎士たちは息を呑み、剣を下げ、道を開ける。
アラン殿下は俺を見据えた。
「ディラン」
幼い頃、何度も呼ばれた声。
胸が詰まる。
「行け。
……間に合わなくなる」
短い言葉。
だが、その裏にある焦りと、俺を信じる強さが痛いほど伝わった。
「……ありがとうございます」
深く頭を下げ、踵を返す。
その瞬間――
「ディラン」
呼び止められ、振り返る。
アラン殿下はまっすぐ俺を見ていた。
「気をつけろ。必ず生きて戻れ」
時間が止まったようだった。
俺の身を案じた言葉。
ずっと嫌われていると思っていたから。
胸の奥が熱くなる。
俺はただ走り出した。
兄の温かな視線を背に受けながら。