第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

迷宮へ

ティアナside

……落とされた。
ジョルジュ陛下の手で。

この高さ――
このままでは、床に叩きつけられる。

両隣には、セナとテオ。
3人まとめて、真っ逆さま。

胸が強く跳ねた瞬間。

「蒼き風よ――導け。ラピスラズリ!」

剣が震え、
蒼い光が一気に広がる。

次の瞬間、
落下の速度がふっと緩んだ。

蒼い風が3人を包み込み、
身体がふわりと浮き上がる。

衝撃が削がれ、
私たちは静かに地面へと降り立った。

「……助かりました」

セナがひらりと着地する。

「お嬢様、ありがとう」

テオはいつもの調子でへにゃりと笑う。

「大丈夫? 2人とも怪我はない?」

「ええ」
「問題なし!」

2人の声を聞いて、胸の強張りが少しほどける。

けれど――

「……でも、正直に言うとね」

私は2人を見て、苦笑した。

「私がやらなくても……2人なら余裕だったんじゃない?」

テオが首を傾げる。

「俺の場合?
全員まとめてぐるぐる拘束して、そのまま落下防止かな」

「それ、絶対酔いそう…」

「でしょ?」
テオが満面の笑みで頷く。

セナは淡々と続けた。

「俺なら…落下地点を凍らせて衝撃を吸収するか、
途中で足場を作るか……」

一拍置いて、
小さく付け足す。

「……まあどっちにしろ、寒くなりますが」

「それはそれでつらいね」

思わず笑うと、
テオが「だねー」とゆるりと笑う。

落下の恐怖で張り詰めていた胸の奥が、
ようやく温かくほどけていく。
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