第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
「お嬢様〜、大丈夫だった?」

ひょいっと覗き込んでくるその距離感が近すぎて、心臓が跳ねる。

「う、うん。テオは?」

「俺?全然平気だよ」

さらっと言うその軽さが、逆に心に刺さる。

「私に剣を向けられないって言ってた割には……容赦なかったね」

苦笑しながら言うと、テオは迷いなく答えた。

「だって、あれはお嬢様じゃないでしょ?
 本物のお嬢様は…こんなに綺麗で可愛いんだから」

へにゃりと笑い、私の頬に触れようと伸びてきた手を――
セナがすかさず掴んだ。

「気安く触るな」

「えぇ〜? ちょっとくらい良くない?
 さっき命張って守ったんだよ、俺」

「それとこれとは別だ」

「けちー。
 お嬢様少しぐらいいいよね?」

急にこちらに振られて、思わず言葉に詰まる。

「え、えっと……」

「ほら、困ってるだろ。離れろ」

「はーい、はーい。
 でもさ、あとで手、握ってくれてもいいよ?」

「握るか!
そんなに握りたいなら俺が握ってやる」

セナがグッとテオの手を掴む。

「いっててて!強い強いって!!」

セナとテオのやり取りに、思わず笑ってしまう。

「とりあえず進もうか」

「ですね」

「はーい。
ほんと容赦なさすぎ」

テオが文句を言いながら、
さらに迷宮の奥へと進んでいく。
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