第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
はぐれてしまった。
気づいていたのに。
私としたことが、なんという失態だ。
舌打ちを噛み殺す。
(くそ……)
お嬢様……どうかご無事で。
そもそも王妃教育へ行かせたのが間違いだったのだろうか。
あれほど嫌がっていたのだから、無理にでも止めるべきだったのかもしれない。
……いや、違う。
どれほど危険から遠ざけようとしても、
お嬢様は必ず立ち向かってしまう。
そういうお方だ。
レイも、きっと焦っているはずだ。
ディラン殿下と逸れてしまったのだから。
後悔しても遅い。
今は進むしかない。
「……心配ですか?」
レイが静かに問いかけてくる。
「はい。ですが、お嬢様はお強い方です。きっと大丈夫です」
そう答えると、レイはふっと微笑んだ。
「そうですね。殿下が気に入るほどですから」
確かに――
あのディラン殿下が、あれほど強く執着するほどに。
「お嬢様が、まさか殿下とうまくいってしまうとは……」
思わず本音が漏れた。
お嬢様が幸せであることは、何よりも嬉しい。
それでも胸の奥が、少しだけざわつく。
「私は、非常に嬉しいですよ」
レイは即座にそう言い、柔らかく笑った。
「殿下には、彼女しかいませんから」
その笑みはどこか楽しげで、迷いがない。
「……お嬢様は、王妃にはならないと思いますよ」
静かに告げる。
お嬢様はあの座を望んでいない。
権力にも栄誉にも縛られることを嫌う方だ。
「ええ。それも承知の上でしょう」
眼鏡の奥で、レイの瞳がきらりと光る。
「とりあえず……お互い、主人の心配が尽きませんね」
「そうですね」
苦笑しながらも、自然と足は前へ進む。
「先を急ぎましょう」
「はい」
強く頷いた。
――立場も、想いも、それぞれ違う。
それでも仕える者として願うことは同じだ。
どうか無事で。
そして、選ぶのなら――
お嬢様ご自身が、心から望む未来を。
そのためなら、私はどこまでもそばにいる。
気づいていたのに。
私としたことが、なんという失態だ。
舌打ちを噛み殺す。
(くそ……)
お嬢様……どうかご無事で。
そもそも王妃教育へ行かせたのが間違いだったのだろうか。
あれほど嫌がっていたのだから、無理にでも止めるべきだったのかもしれない。
……いや、違う。
どれほど危険から遠ざけようとしても、
お嬢様は必ず立ち向かってしまう。
そういうお方だ。
レイも、きっと焦っているはずだ。
ディラン殿下と逸れてしまったのだから。
後悔しても遅い。
今は進むしかない。
「……心配ですか?」
レイが静かに問いかけてくる。
「はい。ですが、お嬢様はお強い方です。きっと大丈夫です」
そう答えると、レイはふっと微笑んだ。
「そうですね。殿下が気に入るほどですから」
確かに――
あのディラン殿下が、あれほど強く執着するほどに。
「お嬢様が、まさか殿下とうまくいってしまうとは……」
思わず本音が漏れた。
お嬢様が幸せであることは、何よりも嬉しい。
それでも胸の奥が、少しだけざわつく。
「私は、非常に嬉しいですよ」
レイは即座にそう言い、柔らかく笑った。
「殿下には、彼女しかいませんから」
その笑みはどこか楽しげで、迷いがない。
「……お嬢様は、王妃にはならないと思いますよ」
静かに告げる。
お嬢様はあの座を望んでいない。
権力にも栄誉にも縛られることを嫌う方だ。
「ええ。それも承知の上でしょう」
眼鏡の奥で、レイの瞳がきらりと光る。
「とりあえず……お互い、主人の心配が尽きませんね」
「そうですね」
苦笑しながらも、自然と足は前へ進む。
「先を急ぎましょう」
「はい」
強く頷いた。
――立場も、想いも、それぞれ違う。
それでも仕える者として願うことは同じだ。
どうか無事で。
そして、選ぶのなら――
お嬢様ご自身が、心から望む未来を。
そのためなら、私はどこまでもそばにいる。