第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
レイと並んで歩きながら、足元へ視線を落とす。
石畳の継ぎ目が、妙に整いすぎている。

(……これ、道じゃない)

嫌な予感が背筋を走り、顔を上げた――その瞬間。

「それ踏んではいけません――!」

声が出たのは、半拍遅れて。

「ご、ごめん! 踏んじゃった!」

レオの軽い声が返った直後、
ぐにり、と石畳が歪む音がした。

床が沈むのではない。
“折れる”ように、空間そのものがずれた。

「レオ! ルイさん!」

手を伸ばすが、もう遅い。

石畳の裂け目が、2人の間に走り、
レオとルイの姿が、ゆっくりと遠ざかっていく。

裂け目の向こうから、ルイの声が響いた。

「こっちはどうにかするわ!
 進んで!」

迷いのない声。
指示というより、覚悟の音だった。

「ごめーん!」

続いて、少し間の抜けたレオの声。
その軽さが逆に、胸を締めつける。

次の瞬間、石畳は何事もなかったように元へ戻り、
2人の姿は完全に消えた。

 静寂。

「……」

唇を噛む。

(止められた。
 気づいてたのに)

悔しさが喉の奥に刺さる。

レイが低く言った。

「追えません。もう、道が違います」

その言葉に、一度だけ振り返る。
そこには、戻る道などどこにもなかった。

「……進みましょう」

自分に言い聞かせるように、そう告げて、
私は前を向いた。
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