第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
そのとき。

「ルイ!! どけ!!」

後方から、迷いのない声が響いた。

「燃えあがれ! ペリドット!!」

――轟。

レオの大剣が、瞬時に赤熱した。

爆ぜる火花が弾け、炎が刀身を包み込む。
熱波が迷宮を駆け抜け、壁の湿気すら一瞬で蒸発する。

「レオ……ちゃん……!」

「援護する! 一気に決めようぜ!!」

タキが振り向いた瞬間――

「邪魔すんなぁぁぁ!!」

暴走した魔力が、黒い塊となって飛んでくる。

「――今よ!」

私は前へ踏み込んだ。

「美しさは、力じゃない」

薔薇色の光を、限界まで解き放つ。

「誇りよ!!」

舞い散る光が一点に収束し、鋭い一閃となる。

「うおおおおっ!!」

同時に、レオが踏み込む。

炎を纏った大剣が、唸りを上げて振り下ろされた。

薔薇色と炎。
2つの力が重なり――

砕けた。

魔宝石が、悲鳴を上げながら粉々に弾け飛ぶ。

「……あ……」

力を失ったタキの体が、崩れ落ちる。
禍々しい紋様は消え、残ったのは――疲れ切った、元の彼だった。

私は剣を下ろし、静かに息を吐く。

「……終わりよ、タキ」

レオが大剣を肩に担ぎ、ぽつりと呟く。

「……強かったな。でも」

炎が消え、赤熱していた刀身が元に戻る。

「間違った強さだった」

迷宮に、静寂が戻った。

薔薇色の光が、ゆっくりと消えていく。

私は剣を収め、目を閉じた。

――これで、よかったのよね。
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