第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
「ディラン、お前の両親は……なぜ死んだか知っているか?」

「船の事故ですよね」

「違うな。事故で死んだんじゃない」

ジョルジュは、まるで天気の話でもするように言った。

「私が処理した」

「……っ!」

視界が揺れた。
怒りで、呼吸が乱れる。

「どうして……! 貴方の息子でしょう!」

「お前を“器”にしようとしていることに気づかれたからな。
我が息子ながら、鋭かったよ」

くつくつと笑うその姿は、もはや人間のものではなかった。

「そうそう。ガイルでは成し得なかった“完全な器”。
それをディラン、お前で完成させる。
さらに——不老不死を実現するために」

胸の奥が、ひどく冷たくなる。

「……」

「そのための“鍵”として、ティアナ——お前の婚約者が必要なんだよ」

その瞬間、胸の奥が焼けるように痛んだ。

ティアナを巻き込むために。
俺を“器”にするために。
すべてが——最初から、歪んだ目的のために用意されていた。

「そんなこと……させると思うか」

低く、喉の奥から絞り出すように言った。
怒りで視界が赤く染まる。

ジョルジュは、まるでそれを楽しむように微笑んだ。
その笑みは、血の通わない仮面のようだった。
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