第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
ティアナside
薄暗い部屋を抜け、さらに奥へ進もうとしたその瞬間——
胸の奥が、ひゅっと冷たくなった。
思わず足が止まる。
「お嬢様、どうされました」
セナが心配そうに覗き込む。
その声が遠くに聞こえるほど、私は“何か”に意識を奪われていた。
「……ディランの魔力が、変なの」
自分でも驚くほど、声が震えていた。
いつもなら温かくて、まっすぐで、触れれば安心できるはずの魔力が——
今は、どこか濁っている。
深い闇に引きずられていくような、嫌な気配。
「なにか……嫌な感じがするの」
テオも眉間に皺を寄せ、周囲を警戒する。
「危ないってこと?」
私は答えず、目を閉じて魔力を研ぎ澄ませた。
意識を細く、細く伸ばし、遠くにあるはずのディランの気配を探る。
——ディラン。
どこにいるの。
胸の奥がざわつく。
彼の魔力が、まるで誰かに乱暴に触れられているように揺れていた。
「……こっちだわ」
目を開いた瞬間、迷いは消えていた。
身体が勝手に走り出す。
「お嬢様、走るのは危険です!」
セナの声が背後から追いかけてくる。
テオも慌ててついてくる気配がした。
「急がなきゃ……間に合わなくなる!」
自分でも信じられないほどの速さで通路を駆け抜ける。
魔力の流れが示す方向へ、ただひたすらに。
胸が痛いほど脈打つ。
嫌な予感が、背中を押すように強くなる。
——ディラン、待ってて。
絶対に、助けるから。
その想いだけが、足をさらに速くさせた。
薄暗い部屋を抜け、さらに奥へ進もうとしたその瞬間——
胸の奥が、ひゅっと冷たくなった。
思わず足が止まる。
「お嬢様、どうされました」
セナが心配そうに覗き込む。
その声が遠くに聞こえるほど、私は“何か”に意識を奪われていた。
「……ディランの魔力が、変なの」
自分でも驚くほど、声が震えていた。
いつもなら温かくて、まっすぐで、触れれば安心できるはずの魔力が——
今は、どこか濁っている。
深い闇に引きずられていくような、嫌な気配。
「なにか……嫌な感じがするの」
テオも眉間に皺を寄せ、周囲を警戒する。
「危ないってこと?」
私は答えず、目を閉じて魔力を研ぎ澄ませた。
意識を細く、細く伸ばし、遠くにあるはずのディランの気配を探る。
——ディラン。
どこにいるの。
胸の奥がざわつく。
彼の魔力が、まるで誰かに乱暴に触れられているように揺れていた。
「……こっちだわ」
目を開いた瞬間、迷いは消えていた。
身体が勝手に走り出す。
「お嬢様、走るのは危険です!」
セナの声が背後から追いかけてくる。
テオも慌ててついてくる気配がした。
「急がなきゃ……間に合わなくなる!」
自分でも信じられないほどの速さで通路を駆け抜ける。
魔力の流れが示す方向へ、ただひたすらに。
胸が痛いほど脈打つ。
嫌な予感が、背中を押すように強くなる。
——ディラン、待ってて。
絶対に、助けるから。
その想いだけが、足をさらに速くさせた。