第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
ルイ side

この気配……間違いない。

「お嬢さんだ!」

レオも同時に顔を上げた。

「感じた! でもこれ……上の方だ!」

右奥の岩壁に、ぽっかりと窪んだ穴がある。
その奥には、上層へ続く細い通路が伸びていた。

「じゃあ、あそこから行くわよ!」

「おう!!」

だが通路の前には、魔宝獣の群れが壁のように立ちはだかっている。

私は舌打ちし、指先に薔薇色の紋様を描いた。

「美しく酔いしれなさい――ローズクォーツ!」

淡い桃色の光が広がり、魔獣たちの意識がふらつく。
足元が揺れ、動きが鈍った。

「レオちゃん、行くわよ!」

「任せろ!」

レオは大剣を構え、吠えるように叫ぶ。

「燃えあがれ――ペリドット!」

大剣が赤熱し、爆ぜる火花が緑炎へと変わる。
振り下ろされた一撃は炎の奔流となり、魔宝獣をまとめて吹き飛ばした。

通路前が一瞬だけ開く。

「飛ぶわよ!」

「は!? お、おいルイ!?」

返事を待たず、私はレオの襟首をがっしり掴む。

「ほらっ、行けぇぇぇ!!」

――ぶんっ。

豪快で力任せ。
レオの身体が弧を描き、上の通路へと放り込まれる。

「うおおおおおおおっ!? 着地ッ……成功ッ!!」

レオが転がりながらも通路に着地したのを確認し、
私は軽く助走をつけて壁を蹴った。

「ふんっ!」

跳躍と同時にローズクォーツの光が足元を押し上げ、
ひらりと通路へ飛び乗る。

「よし、行くわよレオちゃん!」

「お、おう……! すごい力技だな……!」

息を合わせ、私たちはティアナちゃんの気配が強まる上層へと駆け出した。
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