第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
「ディランは……貴方の孫でしょ!
どうしてそんなことが!!」
声が震え、喉が焼けるように痛む。
叫びは冷え切った空間に吸い込まれ、まるで最初から存在しなかったかのように消えた。
ディランの姿をした“それ”は、ぎこちなく首を傾けた。
その動きは、人間の仕草を後から模倣したような、微妙にズレた軌道を描く。
かつての彼の柔らかさとはまるで違う。
まるで、壊れた人形が無理やり笑おうとしているような、不気味な違和感。
「長年の夢だよ」
返ってきた声は、低く湿っていて、耳の奥にまとわりつく。
その瞬間、空気がひやりと沈み、肌の表面に冷気が張り付いた。
「老いた身体で不老不死になったって意味はない…
美しい見た目でなくてはね。完璧ではない」
ディランの顔に浮かんだ笑みは、皮膚の下で別の生き物が蠢いているような歪みを帯びていた。
私は反射的に一歩後ずさる。
「ディランは完璧だ」
その言葉だけが、異様な熱を孕んでいた。
熱といっても、人の情ではない。
狂気が沸騰しているような、濁った熱。
「整った顔立ち、体つき。
瞳の色――明るいところではエメラルド、
暗いところではルビーのように輝く」
ディランの瞳が、光を受けて妖しく揺らめく。
その色は確かにアレキサンドライトのようだった。
だが今は、宝石の輝きではなく、
獲物を値踏みする捕食者の目だ。
「まさにアレキサンドライトを象徴するものだ!」
声が弾け、空気が震えた。
心臓が跳ね、血が逆流するような感覚に襲われる。
「だからディランは、いずれ私の器になる。
そのつもりで育ててきた」
その言葉を聞いた瞬間、血の気が一気に引いた。
ジョルジュ陛下の声は甘く、慈しむようで――
しかしその奥には、底なしの欲望が渦巻いている。
「強く、賢く、美しく。
立派にね」
ディランの身体が誇らしげに胸を張る。
だがその動きは、彼のものではない。
そこにいるのは“孫を誇る祖父”ではなく、
“理想の器を完成させた創造主”だった。
どうしてそんなことが!!」
声が震え、喉が焼けるように痛む。
叫びは冷え切った空間に吸い込まれ、まるで最初から存在しなかったかのように消えた。
ディランの姿をした“それ”は、ぎこちなく首を傾けた。
その動きは、人間の仕草を後から模倣したような、微妙にズレた軌道を描く。
かつての彼の柔らかさとはまるで違う。
まるで、壊れた人形が無理やり笑おうとしているような、不気味な違和感。
「長年の夢だよ」
返ってきた声は、低く湿っていて、耳の奥にまとわりつく。
その瞬間、空気がひやりと沈み、肌の表面に冷気が張り付いた。
「老いた身体で不老不死になったって意味はない…
美しい見た目でなくてはね。完璧ではない」
ディランの顔に浮かんだ笑みは、皮膚の下で別の生き物が蠢いているような歪みを帯びていた。
私は反射的に一歩後ずさる。
「ディランは完璧だ」
その言葉だけが、異様な熱を孕んでいた。
熱といっても、人の情ではない。
狂気が沸騰しているような、濁った熱。
「整った顔立ち、体つき。
瞳の色――明るいところではエメラルド、
暗いところではルビーのように輝く」
ディランの瞳が、光を受けて妖しく揺らめく。
その色は確かにアレキサンドライトのようだった。
だが今は、宝石の輝きではなく、
獲物を値踏みする捕食者の目だ。
「まさにアレキサンドライトを象徴するものだ!」
声が弾け、空気が震えた。
心臓が跳ね、血が逆流するような感覚に襲われる。
「だからディランは、いずれ私の器になる。
そのつもりで育ててきた」
その言葉を聞いた瞬間、血の気が一気に引いた。
ジョルジュ陛下の声は甘く、慈しむようで――
しかしその奥には、底なしの欲望が渦巻いている。
「強く、賢く、美しく。
立派にね」
ディランの身体が誇らしげに胸を張る。
だがその動きは、彼のものではない。
そこにいるのは“孫を誇る祖父”ではなく、
“理想の器を完成させた創造主”だった。