第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
ジョルジュの影が消えた直後――
地下迷宮全体が、ぐにゃりと歪んだ。
壁が波打ち、天井が軋む。
「……まずいな。このままだと潰される」
ディランが険しい顔で言い放つ。
「なにその! お決まり展開!」
レオが叫びながら頭を抱えた。
「とりあえず逃げるわよ!」
ルイも声を張り上げる。
みんなが一斉に駆け出す。
私も走り出そうとした――その瞬間。
太ももの傷が鋭く痛んだ。
「っ……!」
足がもつれかけたその時、
ふわりと身体が持ち上げられる。
「えっ……ディラン?」
ディランが私を抱き上げ、軽く笑った。
「王子の役目を果たさせてくれ。お姫様」
その言い方に、思わず顔が熱くなる。
だがすぐ後ろからテオが声を上げた。
「殿下もボロボロでしょ。俺、代わるよ!」
「いやだ。絶対代わらない」
ディランが即答する。
「あーそう」
テオは呆れたように肩をすくめた。
「ほら、行きますよ!」
セナが先頭で駆け出す。
ユウリとレイも頷き、後に続いた。
崩れゆく迷宮の中、
私たちは全員で出口へ向かって走り出した。