第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
次の瞬間、ディランの身体がふらりと揺れた。

「ディラン!」
私は慌てて支えに入る。

「……すまない」
ディランが弱く笑う。

「いえ、大丈夫です」
私は彼の腕をしっかりと掴んだ。

ディランは私を見つめ、
少し照れたように、でも真剣な声で言う。

「君は……本当に強いな」

「ボロボロですけどね」
私は苦笑した。

「それは……本当にすまない」
ディランが眉を下げる。

私は首を振る。

「違うんです。
ジョルジュだとわかっていたのに……
見た目がディランだったから、まんまとやられました」

「……そうか」
ディランは少しだけ目を伏せた。

私は胸を張って言う。

「だから今度は、ディランの見た目でも
容赦なく叩きなおせるように強くなります!」

ディランは一瞬固まり――
困ったように、でも優しく笑った。

「それは……ちょっと違う気がするよ」

その笑顔に、胸の奥がじんわりと温かくなる。
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