第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
セナside

俺は、試合を見ながらその場に立ち尽くしていた。

(……やった)

いや、違う。

(やってしまった)

視線の先では、ソラ――いや、ティアナが、何食わぬ顔で呼吸を整えている。

(殿下の剣、流したよな……?
 一瞬とはいえ、完全に……)

思わず、両手で顔を覆った。

(ああもう……)

頭がじわじわと痛くなってくる。

(潜入。
 正体隠して、
 目立たず、
 無難にやり過ごす――)

(全部、逆行ってる……!)

周囲では、まだざわめきが収まらない。

「新人、何者だよ……」

「殿下が本気出したぞ……」

そんな声が、容赦なく耳に刺さる。

(聞こえてる、聞こえてるから……!)

俺は、がしっと頭を抱えた。

(あとで絶対、説教……)

ちらりとティアナを見る。

(……本人、楽しそうなのが一番の問題なんだよな)

深く、長いため息が漏れる。

(無事に合宿も潜入も終わる気がしない……)
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