第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
「それにしても……声まで変えてくるとは」
感心したように、ディランが小さく息を吐く。
「兄上から借りたのかい?」
視線が、そっと首元へ落ちる。
隠すようにつけていたチョーカーに、指先が触れ――つう……と、なぞられた。
「っ……」
くすぐったさと、妙な熱が走る。
反射的に肩が跳ねた。
「まあ……」
曖昧に返すと、
「まったく。油断も隙もないな」
呆れたようで、どこか楽しげな声音。
その響きが、胸の奥をくすぐる。
「……」
言い返せずに黙り込む私を見て、ディランは一拍置いてから、
「さて」
と、空気を柔らかく切り替えた。
「お茶に付き合ってくれないか?」
「い、いえ。そんなことをしている場合では――」
任務。潜入。時間。
言いかけた瞬間、
「多少の息抜きをしないと」
まっすぐな視線が、逃げ道を塞ぐ。
「判断力も、集中力も落ちる」
「……」
「それに」
声が、少しだけ低く甘くなる。
「君は今、一人で抱え込みすぎだ」
図星すぎて、胸がきゅっとなる。
「短時間でいい。俺と話すだけでいいから」
優しいのに、拒めない誘い方。
まるで、手のひらで包み込まれているみたいだ。
(……ずるい)
「……少しだけ、ですよ」
そう答えた瞬間、
ディランはふっと目元を緩めた。
「十分だ」
その笑みがあまりに嬉しそうで、
――ああ、この人、本当に最初から逃がす気なんてなかったんだ。
そう思わされるほど、甘くて、近い。
感心したように、ディランが小さく息を吐く。
「兄上から借りたのかい?」
視線が、そっと首元へ落ちる。
隠すようにつけていたチョーカーに、指先が触れ――つう……と、なぞられた。
「っ……」
くすぐったさと、妙な熱が走る。
反射的に肩が跳ねた。
「まあ……」
曖昧に返すと、
「まったく。油断も隙もないな」
呆れたようで、どこか楽しげな声音。
その響きが、胸の奥をくすぐる。
「……」
言い返せずに黙り込む私を見て、ディランは一拍置いてから、
「さて」
と、空気を柔らかく切り替えた。
「お茶に付き合ってくれないか?」
「い、いえ。そんなことをしている場合では――」
任務。潜入。時間。
言いかけた瞬間、
「多少の息抜きをしないと」
まっすぐな視線が、逃げ道を塞ぐ。
「判断力も、集中力も落ちる」
「……」
「それに」
声が、少しだけ低く甘くなる。
「君は今、一人で抱え込みすぎだ」
図星すぎて、胸がきゅっとなる。
「短時間でいい。俺と話すだけでいいから」
優しいのに、拒めない誘い方。
まるで、手のひらで包み込まれているみたいだ。
(……ずるい)
「……少しだけ、ですよ」
そう答えた瞬間、
ディランはふっと目元を緩めた。
「十分だ」
その笑みがあまりに嬉しそうで、
――ああ、この人、本当に最初から逃がす気なんてなかったんだ。
そう思わされるほど、甘くて、近い。