第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
音楽が、ゆるやかに流れはじめる。
自然と、視線が集まった。
――王子と、その婚約者。
会場の中心で向かい合った瞬間、周囲のざわめきが遠のいていく。
(決戦前だというのに……)
胸の奥は、不思議なほど静かだった。
むしろ、彼の手に触れた瞬間、すべてが落ち着いていく。
ディランが、私の手を取る。
もう片方の手が、そっと背に添えられた。
優しくて、迷いのない動き。
そして、私だけに向けられた微笑み。
「……やっと、君と踊れた」
その声音が、甘くて胸がくすぐったい。
「そうでしたか?」
少しだけ意地悪に返すと、
「だって」
彼は声を落とし、距離をさらに近づける。
「王妃教育の時は、君はすぐレイのところへ行ってしまっただろう」
「あー……」
苦笑しながらも、どこか嬉しい。
「仕方ないじゃないですか。ローゼがいましたし」
「だからこそ、だ」
真面目な顔で言われて、思わず息をのむ。
「かなり、妬いた」
「……そうなんですか?」
「ああ」
迷いなく頷く。
「みんな、君が綺麗だから見ている」
「違いますよ」
くるりとステップを踏みながら、そっと囁く。
「ディランを見ているんです」
「いや」
彼は少しだけ口元を歪めた。
「俺に向けられているのは、殺意だな」
「殺意?」
「ひしひしと、感じる」
そう言って視線を逸らす。
つられてそちらを見ると――
……テオ。
完全に、睨んでいる。
(ああ……)
思わず笑いがこぼれた。
「ふふ……」
「ほらな」
ディランが、どこか満足そうに言う。
その瞬間、指先がきゅっと絡められた。
ほんの少し強く。
離さないと言うように。
その温度が、胸の奥まで甘く染みていく。
自然と、視線が集まった。
――王子と、その婚約者。
会場の中心で向かい合った瞬間、周囲のざわめきが遠のいていく。
(決戦前だというのに……)
胸の奥は、不思議なほど静かだった。
むしろ、彼の手に触れた瞬間、すべてが落ち着いていく。
ディランが、私の手を取る。
もう片方の手が、そっと背に添えられた。
優しくて、迷いのない動き。
そして、私だけに向けられた微笑み。
「……やっと、君と踊れた」
その声音が、甘くて胸がくすぐったい。
「そうでしたか?」
少しだけ意地悪に返すと、
「だって」
彼は声を落とし、距離をさらに近づける。
「王妃教育の時は、君はすぐレイのところへ行ってしまっただろう」
「あー……」
苦笑しながらも、どこか嬉しい。
「仕方ないじゃないですか。ローゼがいましたし」
「だからこそ、だ」
真面目な顔で言われて、思わず息をのむ。
「かなり、妬いた」
「……そうなんですか?」
「ああ」
迷いなく頷く。
「みんな、君が綺麗だから見ている」
「違いますよ」
くるりとステップを踏みながら、そっと囁く。
「ディランを見ているんです」
「いや」
彼は少しだけ口元を歪めた。
「俺に向けられているのは、殺意だな」
「殺意?」
「ひしひしと、感じる」
そう言って視線を逸らす。
つられてそちらを見ると――
……テオ。
完全に、睨んでいる。
(ああ……)
思わず笑いがこぼれた。
「ふふ……」
「ほらな」
ディランが、どこか満足そうに言う。
その瞬間、指先がきゅっと絡められた。
ほんの少し強く。
離さないと言うように。
その温度が、胸の奥まで甘く染みていく。