【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?

「誰か、来るのかしら」

「ええ。危険な雰囲気ではなさそうですが。この慌てようは.....」

 とても地位のある方がやって来るのかもしれない。リーフェント家は、公爵家だ。

 我々より地位の高い方といえばーー

 そこまで考えた時、使用人の一人が叫んだ。

「おい!到着なされたぞ!」

 ーーフェンリル・ウィルフォード公爵だ!

「「.....え?」」

 私とリリアの声が、同時に響く。
 出迎えのために開いた扉の隙間から、門をくぐる馬車が見える。

 知らせを受けて迎えに出ていたらしい、リーフェント家の馬車だった。

 屋敷に迫ったその馬車の窓からーー

 フェンリル様の姿が見えた。

「う、そ....」

 私は目を見開いてーー

 瞬間、考えるよりも先に身体が勝手に走り出していた。

「お嬢様!!」

 リリアの呼ぶ声が、背中に飛んできた。
 馬車の停まる音と、扉の開く音も聞いた。

 けれど、私は振り返らなかった。

 全く予想していなかった事態に、パニックになる。

 走って、走って、走って。
 広い庭の奥へと駆けていく。

「ジャスミン!」

「.......っ」

 フェンリル様が、猛烈な速さで追いかけてきていた。

「なぜ、逃げる!」

「に、逃げてなんて、いませんわっ」

「逃げているではないか!」

「あ......っ」

 そんなやりとりに気を取られて、小石に足をとられた。

 転ぶ!

 そう思った時、ふわりと身体が浮いた。
 お腹に回ったフェンリル様の腕が、がっしりと私の身体を支えてくれていたーー。

「やっと、つかまえた」

 ーー逃すわけないだろう?

 そう言って、安堵したようにぎゅっと....後ろから抱きしめられた。

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