隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
私とリルハ嬢の会話を聞いて、殿下もトランドル男爵令嬢も顔を見合わせて失笑していたけれど、価値の見抜けない者たちのすることなど気にもならない。
もちろんフォローというわけでもない。
正直、こんな浅慮な二人なんてどうでもいいし、いっそ地獄の沙汰が下ればいいとさえ思う。
だが、リルハ嬢の心を慮ると言葉にせずには居られなかった。彼女はきっと傷ついている。
.......王族ともあろう者が嘘に踊らされて。真偽を確かめもせず権力を振りかざすなんて。
思わず彼女を見つめていると私の思いが伝わったのか、その瞬間ほんの少しだけ......リルハ嬢の表情が和らいだ気がしたーー。
「......さて、リルハ嬢。宜しければ、リーフェント公爵家の馬車でお送りしましょう。タオルは......受け取りましてね。では、どうぞ参りましょう」
私の呼びかけに静かに立ち上がったリルハ嬢が「感謝致します.....」と小声で言った。
「私たちはこれで。王太子殿下。婚約破棄の件、《《たった今》》お受けいたします。国王へは殿下からご報告願います。私からは父にそのように伝えておきます故。では皆様、お騒がせして申し訳ありませんでしたわ。失礼いたします」
私は胸に抱えた本を抱き直して、一礼してから下がった。