隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
脳の血管が切れるのではと心配するほど興奮していた父は落ち着きを取り戻したがやるせないのだろう。
私より淡いラベンダー色の瞳の奥には悲しみと怒りが燻っていた。
父は、髪と同じ焦茶色の整えられた顎髭を撫でながら唸る。
「それにしても。リルハ嬢、か.....」
「モーリャント第一学院の生徒ということだけれど、あなたから聞く話だと、学院でも随分とご苦労されてそうね.....」
「ええ....」
切り替わった話題に、今度は母が頬に手を当てて息を吐いた。私と同じ長い黒髪が揺れ、エメラルドの瞳は心配の色を映している。
トランドル男爵令嬢は、彼女と同じ学院の生徒だ。
話しぶりから、同じクラスということも十分あり得る。舞踏会での数十分だけ見ても、彼女がリルハ嬢に辛く当たっているのは一目瞭然。毎日のリルハ嬢の気苦労が察せられた。
「お父様。テーナ子爵家に遠縁の養子を迎えたというお話はございますか?」
私は会場で気になっていたことを質問した。
「いや、そんな話は聞いていないが。もしかすると....」
「...............?」
「ああ。いや......なんでもない」
父は答えを濁し、カモミールティーを飲み終えると静かに立ち上がる。