【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
二章『初めまして、狼獣人様』
ーーリーフェント公爵家を出て数時間後。ユービィスト王国へ発つ前の出来事。ーー
私にとって、公爵令嬢が護衛もつけずに一人旅をする危険性も、両親が探しに来るだろうことも想定内だった。
だから、旅に出る前に店に立ち寄った。
モーリャント王国の港近くの暗く不気味な路地の奥に、『魔法使いの老婆が店を構えている』という噂。
以前からまことしやかに囁かれていたそれを信じて、あるものを買いにーー。
ものが溢れかえる薄暗い店内に一歩入れば、気づくと目の前に私をじっと見つめるローブを目深に被った人物が居た。一瞬明かりに照らされた顔には濃い紫の双眸がギラリと光り、ニタァと笑みを深めた。
「ほう。お前さん、いい目をしてるね」
「.....目?」
第一声がそんな言葉で、私は首を傾げた。
「何だい、気づいてないのかい。.....じゃ、忘れておくれ」
「............?」
戸惑いながら頷くと、老婆は店の奥へ行きまたすぐこちらに戻ってきた。手にはピンク色の液体が入った小さな小瓶を持っている。
「はいよ。うちは品揃えが豊富だから、色々な種族を取り揃えてるんだが。お前さんは狼獣人にしときな」
驚いた。まだ何も言っていないのに、私が何を買い求めに来ているのかこのおばあさんは見抜いていた。
私は金貨と引き換えにその『魔法薬』を受け取った。