【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
「お嬢様、いつ頃お戻りになるのでしょうか」
パタパタとはたきで埃を払いながら、侍女のリリアが漏らした。
「.....わからないわ。でも信じて待ちましょう。あれから必死であの子を探したけれど、港で足取りがパタリと消えていたのだから」
ミルラは悲痛な面持ちで、自身に言い聞かせるように言った。
ジャスミンが家を出てから、十日が経とうとしていた。未だに彼女は戻らず、連絡もない。
置き手紙を見つけてからすぐに人を手配し、大勢で捜索した。結果、彼女がモーリャント王国いち栄える港に向かったという情報までは掴めたが、何故かそこからパタリとジャスミンの痕跡が消えていた。
船に乗り国を出たとしても何かしら痕跡が残るはず。
それが綺麗さっぱり残っていないのだからどうしようもない。
犯罪に巻き込まれた気配はなく、トリスの指示で一旦様子を見ることになったのだ。
だが、心配は尽きない。あれからずっと屋敷全体にどんよりした空気が満ちていた。
そしてこの日、さらなる現実が追い討ちをかけるーー。
大きな足音がドカドカとすごい速さでトリスの執務室へ近づいてきたのだ。
「旦那様!」
「.....何だ、騒がしい」
飛び込む勢いで足を踏み入れたのは、家令のケインだった。力無く答えたトリスは視線を俯けたまま、声だけで返した。
「至急、王城へ。国王から呼び出しです。緊急事態だと.....!」
「.....なに?」
未だ力の入らぬ身体をゆっくり動かして、トリスはケインの抱える“赤い封筒“を見遣った。