【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
「.....この薬も万能じゃなくてね。瞳の色と自身の『におい』は誤魔化せない」
「瞳の色と『におい』.....」
「ああ。瞳は元来その人のもつ生命力が集中する場所でね。どんな上流魔法使いがかけても、幻視魔法の類は効かない場所なんだ。.....『におい』はそもそも幻視の範囲を外れる」
確かに。嗅覚は視覚とは別物だ。
「.....『におい』を誤魔化せないと何か不都合がありますか?」
人間の私は、人のにおいなんてそんなに意識したことがない。汗の香りならわかるが。獣達の嗅覚は人間の比でないと聞く。
「......まぁ、相手は獣人たちだからね。でも」
「...................?」
そこで一旦切った老婆は、何かを企む笑みを浮かべる。
「......不都合はない。お前さんにはね。.......長く生きた老婆のお節介だ。聞くも聞かぬもお前さん次第だよ。どうしても気になるなら、『におい』を変える薬もないことはない」
「......じゃあ、このまま行きます」
「くくくっ......素直な子は嫌いじゃないよ」
「ありがとう、お婆さん」
そして隣国への船に乗り込む直前、私はその『魔法薬』を口にしたーー。