【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
「.....じゃあ、すぐに護衛の方を呼びましょう?そうすれば、もう一人でも大丈夫よね。お母様とお父様の所に連れて行ってくれるものね」
「うん.....?でも.....お姉さんはどうするの?」
「私はここで失礼するわ」
5歳の子供と同じ状況なのは恥ずかしいが。私も黙って家を飛び出してきている現在、旅先の王城に足を踏み入れるのは抵抗がある。
幻視魔法もかかっているし大丈夫だと思うが、正体がバレるリスクはなるべく減らしたい。
「えー、やだ!.....そうだ!一緒にケーキ食べようよ。すっっごく美味しいんだよ?僕がお願いすればおっきないちごタルト作ってくれるんだから」
.....可愛い。非常に可愛いし、真の天使だ。
デレッと目尻が垂れる。
でも、私の状況では申し出を受けるわけにはいかない。.....やっぱり断ろうと口を開きかけた時。
「マーナガルム様!」
「あ。フェンリルだぁ」
明らかに「やばっ」という顔でさっと私の背に隠れた彼は、ちろりと目だけを覗かせた。
その間もズンズン大股で歩み寄る大柄な男性はあっという間に距離を詰めてくる。数秒前まで豆粒ほどの大きさだった姿は、もう数メートル先まで迫っていた。
アイスシルバーの髪の毛と瞳、立派な三角耳、尻尾は....ちらりちらりと足の間から見え隠れしている。
形のいい眉に他を圧倒する鋭い目元。ひと睨みされれば、それだけで背筋を冷たいものが駆け抜けそうだ。高い鼻梁に、ほどよい厚さの唇。日焼けした肌は荒れひとつなくスルリとしている。凛々しく美麗な姿だ。
身体は獣人らしく、だがそれ以上にがっしりと逞しい。私より年上で、30歳くらいだろうか。
するとその瞬間。
男性がヒクッと鼻を動かし、一歩踏み出した体勢でピタリと立ち止まった。