隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
「見て。本日もお一人よ」
「本当ね。お可哀想に。殿下は....」
「あそこよ。今日もあの令嬢と....」
「あら、本当。....見まして?あの距離」
「ええ。....どう考えても」
「しっ。それ以上は不敬よ」
「そうね。.....まぁ、でも....婚約者があれじゃあ、ねえ」
「....まぁね」
煌びやかなシャンデリアがキラキラと照らすホールの中央で、モーリャント王国第一王子である王太子殿下がサラサラの金髪を靡かせ青い瞳を細めて笑っていた。
隣には愛らしい薄桃色の髪の毛、同じ色の瞳の大きな目を持つ、華やかな化粧と輝くアクセサリーで彩られた令嬢が寄り添っていた。
ジェシカ・トランドル男爵令嬢。
年は私より二つ下の十八歳。確かまだ、貴族の令嬢・令息たちが通うモーリャント第一学院の学生だ。最近、街で殿下と一緒のところをよく目撃されていて貴族の間では噂になっていた。
皆、豊満な胸を押し付けるようにしなだれかかる彼女を見て、一人ぽつんと置き去りにされている殿下の婚約者である私を憐んでいる。嘲笑を含んで。
彼女らが言いたいことは大体わかる。
私の容姿が気に入らないのだ。この、地味で華やかさに欠ける姿が。自分でも自覚はあるから皆が言っていることも一理ある。
本を読み耽る手を休め、一度自分の身体に視線を落としてみる。
「............」
まぁ、少し地味かしらね。でも本を読むのにひらひら揺れるレースなんて邪魔なだけなのだもの。
私は興味を失って、そっと続きのページを開いた。
「.....ふふ」
「.........?」
すると、近くで鈴を転がす様な声で笑い声が響いた。
見ると王太子殿下と並んで立っていたトランドル男爵令嬢が一人で何かに視線を向けていた。
殿下は侍従に呼ばれ席を外した様子だ。
トランドル男爵令嬢は優雅な笑みを浮かべて、給仕からドリンクを受け取っている。
赤紫色の液体がたぷたぷと揺れるグラスを楽しそうに華奢な手に持って、コツコツ高いヒールを鳴らし近づいていく先には、一人のご令嬢。
この国の貴族の令嬢にはあまり居ないショートカットの髪の毛は、月光の如く輝く白銀色。私と同じく眼鏡をかけていて、瞳の色は判別できない。けれど通った鼻筋や艶やかな唇から整った顔のつくりであることがうかがえた。
着るドレスは他国のものだろうか。モーリャント王国の令嬢たちが着るものとは違っていて、紫のチャイナドレスに近い形だった。一見シンプルだが、生地は上質で、刺された刺繍も見事な意匠だ。
.....留学生かしら。
そう思っていると、そのご令嬢のそばまで来たトランドル男爵令嬢が、何も言わず立ったままの彼女のドレスに向かってあろうことかグラスを傾けたのだ。
「........っ」
パシャと小さく音を立てじわっとシミを広げていく液体。声にならない悲鳴をあげて一歩後ずさった令嬢をみてトランドル男爵令嬢の艶めくリップがぐにゃりといやらしく歪む。
彼女の手からグラスが手放されてヒュッと勢いを緩めず床に落ちていった。
.....カシャン!
大理石の白い床にキラキラとガラスが飛び散り、割れたグラスが無惨な破片となっていた。
その音にホールにいる全員ではないものの、近くに陣取っていた令嬢や令息たちのグループは一斉にトランドル男爵令嬢と留学生と思しきご令嬢の方を振り向く。
それを見計らってトランドル男爵令嬢が声を上げた。
「本当ね。お可哀想に。殿下は....」
「あそこよ。今日もあの令嬢と....」
「あら、本当。....見まして?あの距離」
「ええ。....どう考えても」
「しっ。それ以上は不敬よ」
「そうね。.....まぁ、でも....婚約者があれじゃあ、ねえ」
「....まぁね」
煌びやかなシャンデリアがキラキラと照らすホールの中央で、モーリャント王国第一王子である王太子殿下がサラサラの金髪を靡かせ青い瞳を細めて笑っていた。
隣には愛らしい薄桃色の髪の毛、同じ色の瞳の大きな目を持つ、華やかな化粧と輝くアクセサリーで彩られた令嬢が寄り添っていた。
ジェシカ・トランドル男爵令嬢。
年は私より二つ下の十八歳。確かまだ、貴族の令嬢・令息たちが通うモーリャント第一学院の学生だ。最近、街で殿下と一緒のところをよく目撃されていて貴族の間では噂になっていた。
皆、豊満な胸を押し付けるようにしなだれかかる彼女を見て、一人ぽつんと置き去りにされている殿下の婚約者である私を憐んでいる。嘲笑を含んで。
彼女らが言いたいことは大体わかる。
私の容姿が気に入らないのだ。この、地味で華やかさに欠ける姿が。自分でも自覚はあるから皆が言っていることも一理ある。
本を読み耽る手を休め、一度自分の身体に視線を落としてみる。
「............」
まぁ、少し地味かしらね。でも本を読むのにひらひら揺れるレースなんて邪魔なだけなのだもの。
私は興味を失って、そっと続きのページを開いた。
「.....ふふ」
「.........?」
すると、近くで鈴を転がす様な声で笑い声が響いた。
見ると王太子殿下と並んで立っていたトランドル男爵令嬢が一人で何かに視線を向けていた。
殿下は侍従に呼ばれ席を外した様子だ。
トランドル男爵令嬢は優雅な笑みを浮かべて、給仕からドリンクを受け取っている。
赤紫色の液体がたぷたぷと揺れるグラスを楽しそうに華奢な手に持って、コツコツ高いヒールを鳴らし近づいていく先には、一人のご令嬢。
この国の貴族の令嬢にはあまり居ないショートカットの髪の毛は、月光の如く輝く白銀色。私と同じく眼鏡をかけていて、瞳の色は判別できない。けれど通った鼻筋や艶やかな唇から整った顔のつくりであることがうかがえた。
着るドレスは他国のものだろうか。モーリャント王国の令嬢たちが着るものとは違っていて、紫のチャイナドレスに近い形だった。一見シンプルだが、生地は上質で、刺された刺繍も見事な意匠だ。
.....留学生かしら。
そう思っていると、そのご令嬢のそばまで来たトランドル男爵令嬢が、何も言わず立ったままの彼女のドレスに向かってあろうことかグラスを傾けたのだ。
「........っ」
パシャと小さく音を立てじわっとシミを広げていく液体。声にならない悲鳴をあげて一歩後ずさった令嬢をみてトランドル男爵令嬢の艶めくリップがぐにゃりといやらしく歪む。
彼女の手からグラスが手放されてヒュッと勢いを緩めず床に落ちていった。
.....カシャン!
大理石の白い床にキラキラとガラスが飛び散り、割れたグラスが無惨な破片となっていた。
その音にホールにいる全員ではないものの、近くに陣取っていた令嬢や令息たちのグループは一斉にトランドル男爵令嬢と留学生と思しきご令嬢の方を振り向く。
それを見計らってトランドル男爵令嬢が声を上げた。