隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?


「ジャスミン・リーフェント公爵令嬢」

「.....はい」

 ホールの前まで来ると固く冷たい声で名を呼ばれる。
 本を一旦胸に抱えて、視線を向けた。

「コーネル・モーリャント王太子殿下からご伝言です。本日エスコートができなくなった、と」

「......はい」

「........では、確かにお伝え致しましたので。私はこれで」

 殿下の侍従がそそくさと頭を下げて去っていく。

 いつものことだ。この国の王太子殿下の婚約者に選ばれて十三年。私が王妃教育を終えた昨年には、殿下との婚姻は整う手筈だった。

 現在、殿下は二十二歳。私は二十歳。王族であれば、とっくに結婚していておかしくない。

 だが、彼はそれを拒否しのらりくらりと婚姻を避け続けている。納得のいく説明もないまま、ただ待たされる日々。

「......はぁ」

 婚約者なんて名ばかり。

 王命を受け入れ婚約した日から今日まで、彼に婚約者として大切に扱われた記憶などただの一度もない。それどころか女性だと思われていない気がする。

 
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