Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する
仕事の話は一段落した。

皿は下げられ、店内の灯りも少し落ち着いた色に変わっている。

希が「ちょっとお手洗い」と席を立つ。

男ふたり。

静かな間。

圭祐がグラスをゆっくり回しながら口を開く。

「旬」

初めての呼び捨て。

旬は一瞬だけ目を上げる。

「はい」

圭祐が笑う。

「敬語いらない」

「……圭祐さん」

「さんもいらない」

少しの沈黙。

旬は観念したように息を吐く。

「圭祐」

その呼び方に、圭祐が少し満足そうに笑う。

距離が、ひとつ縮む。

⸻

圭祐がぽつりと聞く。

「希のこと、どう思ってる?」

直球。

旬はすぐには答えない。

数秒、考えてから言う。

「尊敬してる」

圭祐の眉が、わずかに上がる。

「うん」

「あと、守りたいと思ってた」

「過去形?」

「今は並びたい」

静かな空気。

圭祐がゆっくり笑う。

「いい答えだな」

酒をひと口飲む。
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