Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する
広哉、凌、圭佑、そして旬。
定期的に行われる兄弟会。

少し落ち着いた頃。
旬がグラスを見ながらぽつり。

「なんかさ」

3人が顔を上げる。

「希は俺が金持ちだから捕まえたみたいに言われてて、俺は希が有名人だから近づいたって言われてる」

空気が変わる。

旬は続ける。

「それだけは納得いかないんだよね」

広哉、眉を上げる。

凌は黙って聞いてる。

圭祐は視線を逸らさない。

旬が静かに言う。

「出会った時さ、俺らただの青山不動産の社員と空間デザイナーだと思ってたろ」

圭祐、うなずく。

「ああ」

旬の口元が少しだけ緩む。

「希も俺の肩書き知らなかったし。
俺も、Minoの名前も知らなかった」

広哉、にやり。

「ただの男と女」

旬、うなずく。

「ただの。ろくに話もできなかったし」


旬の目が少し遠くを見る。

「家とか知名度とか、後からついてきただけ。俺が好きになったのは…
自分の空間に本気で向き合ってる顔」

圭祐、静かに聞いてる。

旬は続ける。

「有名だからでもない。利用できるからでもない。一目惚れだし。」

広哉、笑う。

「素直か」

旬も少し笑う。

「でもさ。
何も知らないで好きになれたの、希が初めてなんだよ」

沈黙。
重くない。
でも本気。

凌がぽつり。

「じゃあ気にするな」

旬は首を横に振る。

「俺はいい。でも希がそう思われるのは嫌だ」

圭祐の目が変わる。
兄の顔。

「誰かに言われたのか?」

旬、少しだけ迷う。

「直接じゃない。でもネットとか」

広哉あきれたように。
「外野は暇だからな」

圭祐はゆっくり言う。

「希はな。そういうの、気にしてない顔する。でもな、ちゃんと傷つく。」

旬の指が止まる。

「……だよな」

凌が静かに。

「じゃあどうする」

旬は迷わない。

「証明する。俺らが並んでるって」

広哉、笑う。

「どうやって」

旬はグラスを置く。

「時間で」

「肩書き消えても残る関係で」

圭祐がゆっくり頷く。

「それが一番強い」

旬は最後に小さく言う。

「俺は希の“成功”が好きなんじゃない。
希が成功する前から好きだった」

静か。

圭祐がふっと笑う。

「それ、本人に言えよ」

旬、少し照れる。

「言うよ」

広哉が立ち上がる。

「はいはい、純愛確認会終了」

凌「あの頃のメソメソ旬に聞かせたいな」

「うるせぇ」

でも顔は、まっすぐ。

肩書きの恋じゃない。

“最初から”の恋。
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