天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜
「すごく嬉しいよ。ありがとう。やばい、嬉しくて泣きそう」

 目頭が熱くなる。
 そんな様子の私を見て
「大げさだよ。高い物じゃなくてごめん」
 優馬は笑ってくれた。

 ああ、私、今とっても幸せだ。
 神様、ありがとう。《《今世》》は、無事に生涯真っ当な人生を歩めるかもしれない。

 そんな時、ものすごい勢いで歩いてくる女性が見えた。
 怒っているのか、眉間にシワを寄せ、口はギュッと結んでいる。

 なんか、こっちを睨みつけているような気がするけど、気のせい?
 
 その女性に目がいってしまい、無言でいると
「どうした?」
 優馬が声をかけてくれた。

「いや。私たちには関係ないんだけど、すごく怖い顔した女の人がこっちに来るから。気になっちゃって」

「えっ、どこ?」

 優馬がクルリとうしろを見た瞬間、彼の動きが止まった。

 そして
「どうして……」
 そんな風に何度も呟いている声が聞こえる。

「優馬?どうしたの?」

 私が彼に声をかけたその時、その女の人が私たちのテーブルの前で急に止まった。

 えっ。怖い。なに?

 何度か瞬きをしながら女性を見つめてしまった。
 その瞬間
<バシャッ!!>
「えっ……」

 勢いよく、グラスに注がれた水を顔にかけられた。

 水の勢いが強く、顔に痛みさえ感じる。
 なにこれ。状況が理解できない。私、この人のこと知らないのに。

「このクソ女!最低!自分が何しているのかわかってんの!?」

 彼女は怒鳴り声を上げ、私の肩をグイっと押した。

 なに、わかんない。私この人になにかした?

「おいっ、夏子!ごめん、落ち着け!誤解なんだ!」

 優馬が席から立ち上がり、私の前に立った。
 夏子?夏子ってだれ?

「優馬は黙ってて。きっとあなた優しいから騙されたんでしょ。わかってる。全部この女が悪いのよ!人の旦那に手を出して。慰謝料請求するから!」

 えっ。ちょっと、待って。
 今、人の《《旦那》》って言わなかった?

 ドキッと嫌な鼓動が鳴る。

 他の客席からも痛い視線を感じた。
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