天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜
帰りたくもなくて、ふらり一人で歩いていた。
着いた先は、海が見える公園だ。柵につかまり、港の景色を見る。
きっといつもなら<綺麗>って思うんだろうけれど。何も感じない。
この真っ暗な海に飛び込んでしまいたい気分。
ずっと海の中を見ていた時だった。
「おい、やめろ」
グイっと肩を掴まれる。
強い力で引っ張られ、後方へのけぞる。バランスを崩して転倒してしまいそうになったところを声の男性が支えてくれた。
「えっ」
声の主を見る。さっきレストランで助けてくれた綺麗な男の人だ。
どうしてここに?
「探してた」
真っすぐと私を見つめる瞳。走っていたのか、彼は少し息が切れている。
似てる、やっぱり風見先生に。それに彼の雰囲気は、私の過去に愛した大嫌いな人物にも似ていた。
「さっきは返事ができなかった。俺、一緒の病院で働いている風見だから。《《光藤さん》》、知ってたんだな。俺のこと」
やっぱり風見先生だったの?
風見先生は、私が勤める総合病院の外科医だ。まだ三十代半ばだというのに、彼の功績は有名。しかもイケメンだから余計に病院内では注目を浴びている人。
私は関わったことがほとんどないけれど、いつも誰かが噂をしている。
あれ。今、光藤って私の名前言わなかった?
同じ病院に勤めていても、事務員なんてたくさんいる。
それに先生とはあまり関わらないのに。覚えていてくれたのかな。
「やっぱり風見先生だったんですね。私、同じ病院の事務で勤めている光藤です」
「ああ。知っている」
さっき名前を言ってくれたから、私のことを先生が知っていたのはわかった。だけど、事務職員なんてたくさんいるのに、どうして名前を憶えていてくれたんだろう。お医者さんってやっぱり記憶力が良いのかな。
「私、別に飛び込まないです。生きる希望はありませんが、死のうとしているわけではありません」
私の発言に彼は
「そうか」
安心したように顔の表情が緩み、口角が上がる。
ズキンと頭が痛くなった。
ああ、ダメだ。思い出してしまいそう。
いや、正確には覚えているんだ。
この人と接していると《《前世》》の私の記憶が鮮明になる気がする。
私には、前世の記憶があった。
誰も信じてくれないから、大人になってからは話したことはない。
人は転生を繰り返していると聞いたことがある。きっと私も何度か転生しているはずなのに、一人の女性だった頃の記憶だけが魂に刻まれている。
未練や悲しみ、恨みを抱いて亡くなったからだと私は勝手に思っているけれど。風見先生に会ってから、その記憶が強くなった。
頭痛がする中で
「光藤さん、不倫してたのか?あの母親、もっと強い力で突き飛ばしてたら、転倒して、もしかしたら最悪なことになっていたかもしれない。どうして冷静になれなかったんだ」
風見先生から言われた言葉に、ギュッと心が痛くなる。
この人も私の敵なんだ。
心が壊れている私は、今、私を責めてくる人間を拒絶している。
一気に感情が高ぶり
「わざわざそんなことを言うために追ってきたんですか!?向こうからしたら不倫ですけど!既婚者だって今日まで知らなかったんです。水かけられて、殴られて、冷静でいられるわけないでしょ!?風見先生まで私を責めるんですね!赤ちゃんがいるってわかってたら、あんなことしないっ……」
急に動悸がしてきた。呼吸がうまくできない。
「うくっ……」
苦しい。私はその場でうずくまってしまった。
「大丈夫か?」
先生が背中をさすってくれたけど
「触らないで!どうせ私のこと捨てるくせにっ!」
あれ。私、何を言っているんだろう。
先生のことを振り払おうとした瞬間、目の前が真っ暗になった。
着いた先は、海が見える公園だ。柵につかまり、港の景色を見る。
きっといつもなら<綺麗>って思うんだろうけれど。何も感じない。
この真っ暗な海に飛び込んでしまいたい気分。
ずっと海の中を見ていた時だった。
「おい、やめろ」
グイっと肩を掴まれる。
強い力で引っ張られ、後方へのけぞる。バランスを崩して転倒してしまいそうになったところを声の男性が支えてくれた。
「えっ」
声の主を見る。さっきレストランで助けてくれた綺麗な男の人だ。
どうしてここに?
「探してた」
真っすぐと私を見つめる瞳。走っていたのか、彼は少し息が切れている。
似てる、やっぱり風見先生に。それに彼の雰囲気は、私の過去に愛した大嫌いな人物にも似ていた。
「さっきは返事ができなかった。俺、一緒の病院で働いている風見だから。《《光藤さん》》、知ってたんだな。俺のこと」
やっぱり風見先生だったの?
風見先生は、私が勤める総合病院の外科医だ。まだ三十代半ばだというのに、彼の功績は有名。しかもイケメンだから余計に病院内では注目を浴びている人。
私は関わったことがほとんどないけれど、いつも誰かが噂をしている。
あれ。今、光藤って私の名前言わなかった?
同じ病院に勤めていても、事務員なんてたくさんいる。
それに先生とはあまり関わらないのに。覚えていてくれたのかな。
「やっぱり風見先生だったんですね。私、同じ病院の事務で勤めている光藤です」
「ああ。知っている」
さっき名前を言ってくれたから、私のことを先生が知っていたのはわかった。だけど、事務職員なんてたくさんいるのに、どうして名前を憶えていてくれたんだろう。お医者さんってやっぱり記憶力が良いのかな。
「私、別に飛び込まないです。生きる希望はありませんが、死のうとしているわけではありません」
私の発言に彼は
「そうか」
安心したように顔の表情が緩み、口角が上がる。
ズキンと頭が痛くなった。
ああ、ダメだ。思い出してしまいそう。
いや、正確には覚えているんだ。
この人と接していると《《前世》》の私の記憶が鮮明になる気がする。
私には、前世の記憶があった。
誰も信じてくれないから、大人になってからは話したことはない。
人は転生を繰り返していると聞いたことがある。きっと私も何度か転生しているはずなのに、一人の女性だった頃の記憶だけが魂に刻まれている。
未練や悲しみ、恨みを抱いて亡くなったからだと私は勝手に思っているけれど。風見先生に会ってから、その記憶が強くなった。
頭痛がする中で
「光藤さん、不倫してたのか?あの母親、もっと強い力で突き飛ばしてたら、転倒して、もしかしたら最悪なことになっていたかもしれない。どうして冷静になれなかったんだ」
風見先生から言われた言葉に、ギュッと心が痛くなる。
この人も私の敵なんだ。
心が壊れている私は、今、私を責めてくる人間を拒絶している。
一気に感情が高ぶり
「わざわざそんなことを言うために追ってきたんですか!?向こうからしたら不倫ですけど!既婚者だって今日まで知らなかったんです。水かけられて、殴られて、冷静でいられるわけないでしょ!?風見先生まで私を責めるんですね!赤ちゃんがいるってわかってたら、あんなことしないっ……」
急に動悸がしてきた。呼吸がうまくできない。
「うくっ……」
苦しい。私はその場でうずくまってしまった。
「大丈夫か?」
先生が背中をさすってくれたけど
「触らないで!どうせ私のこと捨てるくせにっ!」
あれ。私、何を言っているんだろう。
先生のことを振り払おうとした瞬間、目の前が真っ暗になった。