天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜

気になる彼は……

 身体が思ったように動かない。
 脳外の先生からは、とりあえず後遺症のことはあまり心配しなくて良いと言われたけれど、これからのリハビリが大切だって説明を受けた。

 私の身体、鉛がついたように重い。
 腕を上げるのだって、怠く感じてしまう。
 立ち上がることなんてできるんだろうか。

 自分ではほとんど何もできない状況、これから回復できるのだろうかと不安に思ってしまう。

 高木先生がいてくれるから大丈夫。
 私は一人じゃない。

 でも――。
 高木先生のことは優しい人だって思うのに、何かが違う気がした。
 それは私のただの勘なんだけれど。

 ああ、転落する前の記憶が戻れば良いのに。何かの拍子に記憶が戻る可能性はあるって言われたから。ゼロではないんだろうけど。モヤモヤするんだよな。

「トントントン」

 病室のドアをノックする音が聞こえた。

「はい」

 声を出すと、そこには風見先生が立っていた。
 風見先生は、私が転落した時に手術をしてくれた先生の一人だってあとから聞いたけど、なんだか雰囲気がよくわからなくて少し苦手だと思ってしまう。

 風見先生は私の返事を聞いたあとに、無言で病室に入り、イスに座った。

「何か変わったことはあったか?」

「いえ。とくにないです」

 横になりながら、先生をチラッと見る。爽やかなイケメン。
 なのにどこか冷たい雰囲気。
 患者さんには優しいって噂の人じゃなかったっけ?
 目覚めの態度から一変、急に冷たくなった。
 私のこと、気に入らないのかな。
 何をしにこの病室に来たんだろう。
 無言の時間が続く。

 気の利いたこと、話せそうにない。
 風見先生も忙しい人なのに、何も用事がないなら医局に戻れば良いのに。

「雫羽の作るご飯が食べたい」

 ぽつっと寂しそうに風見先生は呟いた。
 あれ、風見先生って私の作るご飯なんて食べたことあったっけ?
 思い出せない。

「元気になったら作ります。高木先生と一緒に食べましょう」

 私が返答をすると、彼はムッとした顔をし
「あいつはいらない」
 そう答えた。

 いらないと言われても、風見先生と二人でご飯を食べるわけにはいかないよ。

「雫羽、本当はっ……」

 彼が何かを言いかけた時、トントントンと病室をノックする音が聞こえた。

「風見先生、やっぱりこちらにいらしたんですね。休憩中で申し訳ないんですが、急患です」

 男性看護師がドアの前で先生を呼び出す。

「また来るから」

 風見先生は一言私に声をかけ、足早に病室から出て行く。

「本当はっ……て、何を言いたかったんだろう」

 途中で言いかけた言葉がとても気になる。
 また来るって言っていたし、その時に聞けばいいよね。
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