転生したらチートアイテムが弱すぎて詰んでしまいました

第十話      幹部

「幹部って?」

「そうさ。僕はこの国の魔王軍幹部トンプリー。
 そして、君の足の下にいるお前にとっての敵は、コンボーと言う僕の可愛い手下たちさ。」

 うわ!いかにも手下みたいな名前だな。
 そんなことより、この人って剣士じゃないのか?
 俺って、騙されていたのか?
 やっとこの世界に来て仲間が増えたって言うのに、こんなのありかよ。

「幹部ならなんでこんなところにいるんだ?
 普通だったら、もっとダンジョンの奥深くとかじゃないのか?」

「生憎だが、私はあまりそう言ったところに定住するのを好ましく思わないんでね。
 こうやって冒険始めたての旅人を倒すのには、此処は絶好の場所なんだ。」

「最悪だな!幹部のすることとは思えないぞ!」

「幹部と言っても私たちはそもそも魔の生き物なんだ。
 魔王がそんなに美しいものだとは思うなよ。」

 確かに言われてみればそうだ。
 最近はネットでもかっこいい幹部だとかで人気を稼いだり、自分が魔王軍幹部に転生したりと言う作品が多かったが、魔王がそもそも邪悪なものだと言うことを忘れていた。

「じゃあ、やっぱりさっきの声も、お前が出していたんだな。」

「ああ、その通りだ。しかしその前に、お前は試練で失敗していたら、そもそも此処までは来ていなかった。
 此処に来れたことは褒めてやろう。」

 こいつは知らないかもしれないが、途中でも俺は何回も死んでいたんだぞ。

「だが、あのままだったら、お前はこの場所から逃げることができた。
 しかしお前は、普通の人間ではなかったようだ。
 ここから出たければ、今すぐそれを私によこせ!」

 このノートってそんなすごいことが書かれているのか?
 俺のノートだぞ?
 そこまで言うんだったら、そろそろ中身を見てみるか。
 なんかあいつもあいつですぐには襲ってこなさそうだし、中身が気になってしょうがない。

「パラパラパラっ」

「なんだ?ロウウイン…」

「まて!それ以上唱えるな!」

 唱えるってなんだ?
 もっと見てみるか。なになに?
 ロウウインド
 この技を使うと、ちょうど使い手の下半身の位置に半径15メートル範囲で、うちわ程度の風が起こります。
 やり方は、右手の中指、小指をたて、左手の親指と繋げ、足膝の高さまで前を向きながら下ろします。
 そうしたら…

 ってこれ!俺の厨二病ノートだ!
 初めて異世界転生ものにハマった時、どうしても自分で技を作らずにはいられなくて、なんとかカッコイイポーズを考えたけど、全然うまくいかなかったやつだ。

「でも、なんでこれがそんなに大事なものなんだ?」

「分からないのか?その書はこの世界では知らされていない技がたくさん書いてあるのだぞ。」

 これ考えたの全部俺だけどな。
 しかもさっきの一瞬でそんなところまで見てたのか!
 しかし、これに乗っていることがそんなに強いなら、あまりこれを渡したくはないな。

「とにかく、お前はこれが欲しいのか?
 なら、今この場で見てもいいんだぞ?」

「見ても全部覚えられるわけがないだろ!
 それに相応しいのは私なんだから、私が持っているべきだ!」

「なんだって?!これは、もともと俺が持っていたものなんだから、俺が持っているべきだろ!」

「やはり、ここは力ずく取り返すしかないようだな。」

 くそっ。この状況だと、相手は手下を大量に連れてくるやつだ。
 あのコンボーとか言う雑魚キャラみたいなやつですら戸惑ってしまうんだから。
 そうだ!

「そんなに自分に自信があるなら、俺と正々堂々勝負をしよう。
 お前が勝ったら、これはそのままお前にくれてやる。
 良い条件だろ?」

「その勝負乗った!」

「仮に負けたら、このノートは俺が保持したまま、この場所から出させてもらう。
 そしてここは男っぽく、一対一で勝負をしよう。
 手下を使うのは一切なしだ。いいな?」

「よかろう。ならば、お前をそこに書いてある内容の魔法や技を使うのは、一切禁止だ。お互い公平な条件だろ?」

 こいつどんなけこれがすごいと思ってるんだよ!
 まあ、しょうがない。
 たとえこれが見えたとしても、戦っている時にいちいち確認はできない。
 ならば…

「いいだろう。その勝負受けて立とう。」

 こうして俺は異世界生活始めての魔王軍幹部との戦いが始まった。
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