私のために泣いてくれた若年性がんサバイバーに救われた話
<1週間後>

イエリ
『やっと涼しくなりましたね、風が気持ちいいです。』

16時を過ぎ、夏の暑さが少しやわらいできた。

イエリは川辺のコンクリートブロックの上を歩きながら、無邪気に笑った。

ボーカリストを目指していたあの頃と同じ笑顔だった。

私たちはコンクリートのへりに腰掛け、水面を眺めた。

イエリ
『お仕事終わりで疲れてるところ、ありがとうございます。』

ユノ
「こちらこそ、忙しいところ時間を作ってくれてありがと。」

私はここでも平静を装ったが、本当は「仕事帰り」も「大丈夫」もウソだった。

この時の私は、仕事も健康も夫も失い「就労移行支援」に通所していたから。



◇◇

私は両親と不仲で、実家を飛び出した末にうつ病になった。

1人で生き延びていた折に夫に出逢い、考える余裕もないまま結婚した。

が、夫はメンタルに問題があり、折り合えないまま私のうつ病が再発。

私が前職をドクターストップで辞めると、夫は「離婚しよう」と言ってきた。

次の日、夫の両親が家に来て離婚届けを出し、夫の荷物を持って立ち去った。

私は数ヶ月の闘病の末、ようやく起き上がった。

が、頼れる家族もなく、生活保護が視野に入りかけていた。

そんな状態で作った笑顔と声色は、イエリに簡単に見抜かれてしまった。
< 2 / 7 >

この作品をシェア

pagetop