身代わりの結婚は本当の愛のために
 驚いたのはお母様も同じだったようで、そう声をあげた。

「あなたたちは、私がいつまでも結婚もせず、子どもも作らないことを気にされていたんでしょう? こんな条件まで入れて」
そう言って、机に置かれた書類を指でトントンと叩いた。
 怒りすら滲む彼に、お母様は「だって……」と、少し幼い感じでそう口にした。きりっとした社長夫人に見えたが、もしかすると箱入り娘なのかもしれない。

「それならば、彼女と結婚します。ほかの日の見合いは、もう行きません。それこそ時間の無駄です」
 きっぱりと言い切った彼を見て、お母様は上目遣いでお父様に視線を送った。
 そんな久遠家の様子に、すかさず父が口を挟む。

「真白は、こう見えて体だけは丈夫ですから」
 体だけは丈夫?
 たしかに私は、あまり風邪などは引かないけれど、多少具合が悪いと言ったところで、気にしてくれるような人たちじゃなかった。
 別に、これまで一度も病気をしたことがないわけじゃない。
 だけど、そんなことをここで言ったところで、なんの意味もないのはわかっていた。
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