ノイズの向こうで君は歌う

Aメロ

中学入学にあたって決めたことが二つある。

一つは『他人に期待しない』こと。

人に頼ったらろくなことにならない。
十二年生きてきて、身に染みて分かった。
大抵のことは自分だけでやった方がうまくいく。

「思いやりが大事!」なんていっても、まったく同じように考えることのできる人間なんていないのだ。
だったら最初から一人でやった方が、めんどうがない。

もう一つは――。

「ジョージ見ーっけ!」
「おわっ!」

背中になにかがぶつかってきて、俺は廊下に盛大に転んだ。

いや、『なにか』の正体はわかっている。
声を聞くまでもない。
こんなことをするのは、あいつだけだ。

「ねぇねぇ今日はお昼どこで食べるの? 中庭? グラウンドの片隅? それとも教室のすみっこ? 屋上行こうよ屋上。いいものあるよー?」

声の主は、転がる俺を気にすることなくたたみかけてくる。
「あっそれとも学食? じゃあ一緒するー」じゃねぇよ。
マシンガントークやめろ!

「いいかげんにしろ山都!」

俺はいきおいよく起き上がって、彼女に怒鳴った。
彼女は一瞬きょとんとして、それからにっと笑う。

「それとも、お手製弁当食べる?」

そう言って、小さな巾着に包まれた弁当を掲げる山都に、俺は盛大にため息をついた。

「食べないほっとけどっか行け」
「ジョージつれなーい!」

腰をくねらせて言う山都を置いて、俺は歩き出した。
だけどこいつはしつこくついてくる。

こうなったらてこでも離さないのがこいつだ。
つかまった時点で、もうあきらめてる。

「ジョージ?」
「屋上、行くんだろ?」

俺は首だけで振り返って言った。
山都は一瞬きょとんとして、それから満面の笑みを浮かべる。

……俺も大概甘い。
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