激甘嘘婚~冷徹社長は初恋秘書を手放さない~
家をなくした由利は、ひとまず大学時代の友人の架純(かすみ)を頼ることにした。

「わー、いらっしゃい! 寒かったでしょ?」

自宅マンションの玄関で、黒髪でゆるふわパーマの架純が由利を出迎える。

昔は地味だった架純だが、社会人になり急にあか抜けた。もともと美人だったが、メイク上手になってから、さらに綺(き)麗(れい)になっている。

「ごめんね、こんな夜に急に来て」

「いいのいいの、頼ってくれて嬉(うれ)しいから! ゆっくりしていって!」

見た目は綺麗系になった架純だが、口を開けばあの頃と同じ天然で明るい雰囲気のままで、由利はホッとした。

架純には、同棲中の彼氏の家族が来ている間だけ泊めてほしい、と伝えている。

浮気されて追い出されたとは、口が裂けても言えなかった。

「ありがとう。お邪魔します」

「寒かったでしょ? しっかりあったまってね」

架純は熱々のココアを淹れてくれ、シャワー後には暖かい部屋着まで貸してくれた。

架純の優しさに、傷だらけの心がホロリとする。

布団を借りて、リビングのソファーで寝かせてもらうことになった。

「うん、うん、そうだね。え? 私も会いたい」

壁の向こうから、彼氏と電話中らしき架純の声が聞こえてくる。

由利は見慣れない天井を眺めながら悶々としていた。

架純の家に、長くいるわけにはいかない。

とはいえ由利には、新しい家を見つけて引っ越すお金もなかった。

いつもの出費に加え、弟たちにパソコンを買ってあげたばかりで、金欠なのだ。

架純の家にいられなくなった後どうするか、そのうち考えないといけない。

(今の私、本当になにも持っていないわ) 
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