女神アフディーの初恋
教室の女教師
「……これが、女神アフディー様が、私たちの住むこの地上で知った、いくつもの『愛』の形です」

 女教師は、聞き入る生徒たちを静かに見渡し、語りかけます。

「みなさんは、この物語の中にいくつの愛を見つけることができたでしょうか。「弱き者を助ける愛」、「信じ抜く愛」、そして何より「互いを思いやる友情という名の愛」……その尊い経験があったからこそ、今も人々を見守る「愛を司る女神」がいらっしゃるのです」

 ベンがおそるおそる手を挙げると、女教師は冷徹な視線を向け、「どうぞ」と短く頷きました。

「……アフディーは、その後どうなったんですか?」

 その瞬間、女教師は鬼のような形相で教卓を叩きました。
 バンッ!という鋭い音に、教室中の生徒が肩を震わせます。

「アフディー「様」と呼びなさい!」

 ベンは震え上がりながら、必死に言い直しました。

「ア、アフディー様は……神々の国に戻られた後、どうなされたのですか?」

「アフディー様は人間との友情を知り、今もなお、天上から皆さんのことを見守っていらっしゃいますよ」

 続いてメアリーが、切なげな瞳で手を挙げました。

「アフディー様とアロン少年は、その後、二度と会えなかったんですか?」

 女教師の厳しい表情が、一瞬だけ、夕暮れのような影を帯びました。

「アフディー様は女神。アロンは人間です。……愛する人が一人で老いてゆく姿を見たくないと願った彼女は、その後、二度と彼の前には現れませんでした。そうして、あまりに長い年月が過ぎ去ってしまったのです」

 彼女は再び背筋を正し、教室全体を射抜くように見渡しました。

「いいですか、皆さん。そんなアフディー様をがっかりさせないためにも、日々『愛』を胸に抱き、一日一日を正しく過ごすのですよ」
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