【長編版】天才幼女セラフィーヌ、ツンデレ辺境伯様とただいま領地改革中!
天才幼女、料理に挑む
それから私たちは、簡単に役割分担を決めた。
レオンハルトは王都にある商会と連絡を取り、販売ルートの確保や荷馬車の手配を引き受けてくれた。
一方で私は、レオンハルトと話していた『加工品づくり』の案についてずっと考えていた。野菜をそのまま売るだけじゃなく、スープやジャムにして保存できる商品にすれば遠くの町でも売れる。
とはいえ、私自身が商品を量産できるわけではない。このヴェルナー領の中で製造を任せられそうな人材を探さなければならない。
(……人材探しって一番難しいのよね)
どんなに優れた計画を立てても、実行できる人がいなければ意味がない。結局最後にものをいうのは『人』なのだ。自分の描いたスケッチブックの絵を見ながら悩んでいるとリビングのドアが開いた。
「お嬢様、今日は絵のお勉強ですか?」
午後のお茶を持ってきたマルタに、私はスケッチブックを持ち上げて瓶の中に果物が入っている――つもりの絵を見せた。
「あのね、ここのおやさいやくだものでスープとかジャムを作ったら売れるとおもう?」
マルタは一瞬ぽかんとしたあと、困ったように笑った。
「そうですね……昔でしたらきっと売れたと思います」
「むかし?」
マルタは少し言葉を選ぶようにしてから、小さく息をついた。
「……このヴェルナー領は、昔は観光地としてとても人気だったのです。水が綺麗で空気も良くて景色も美しい。王都から避暑に訪れる貴族の方も多くいらしたほどです。特に丘の上のレストランは、予約が取れないほどの人気でした」
(観光+グルメのセットってこと?めちゃくちゃ強いじゃない!)
私は内心色めき立ったけれど、マルタの表情は暗いままだった。
「ですが……三年前に水質汚染の噂が立ちまして」
「え?」
「この土地の水は毒だという噂が、あっという間に王都まで広がったのです。旦那様も何度も調査を依頼し安全だと訴えました。それでも、一度広がった噂は消えるどころか、隠蔽だなんだと余計に騒がれて……」
風評被害――そのせいで観光客はぱったりと来なくなり、レストランや宿も次々に閉めざるをえなくなったという。地域経済全体が被害を受けてしまい、雇用も税収も失われた。そこから一気に資金繰りが悪化したのだろう。
「セラフィーヌお嬢様はまだ小さくていらっしゃいましたから、ご存じなくても無理はありません」
三年前ならセラフィーヌは当時二歳。風評被害のことを覚えていなくてもおかしくはない。だから記憶の統合をしても、私はこの情報を持っていなかったんだ。
(でも原因が『噂』なら、ひっくり返せる可能性はあるわ)
私はぐっと拳を握った。
「マルタ、そのレストランをやっていた人は?」
「……ミーナという女性です。私の同級生でとても腕がいい料理人でした」
「ほんと!?そのひとにあえる?」
「南の丘の上に一軒の家があります。レストランは閉めてしまいましたが、二階が住居になっていますので今もそこで暮らしています」
そこでマルタは、気がかりそうに目を伏せた。
「けれど、もう料理から足を洗って何年も経ちますから……」
それでも私は、どうしても一度会ってみたかった。私はマルタに頼み込んで、ミーナのところへ連れて行ってもらうことになった。
レオンハルトは王都にある商会と連絡を取り、販売ルートの確保や荷馬車の手配を引き受けてくれた。
一方で私は、レオンハルトと話していた『加工品づくり』の案についてずっと考えていた。野菜をそのまま売るだけじゃなく、スープやジャムにして保存できる商品にすれば遠くの町でも売れる。
とはいえ、私自身が商品を量産できるわけではない。このヴェルナー領の中で製造を任せられそうな人材を探さなければならない。
(……人材探しって一番難しいのよね)
どんなに優れた計画を立てても、実行できる人がいなければ意味がない。結局最後にものをいうのは『人』なのだ。自分の描いたスケッチブックの絵を見ながら悩んでいるとリビングのドアが開いた。
「お嬢様、今日は絵のお勉強ですか?」
午後のお茶を持ってきたマルタに、私はスケッチブックを持ち上げて瓶の中に果物が入っている――つもりの絵を見せた。
「あのね、ここのおやさいやくだものでスープとかジャムを作ったら売れるとおもう?」
マルタは一瞬ぽかんとしたあと、困ったように笑った。
「そうですね……昔でしたらきっと売れたと思います」
「むかし?」
マルタは少し言葉を選ぶようにしてから、小さく息をついた。
「……このヴェルナー領は、昔は観光地としてとても人気だったのです。水が綺麗で空気も良くて景色も美しい。王都から避暑に訪れる貴族の方も多くいらしたほどです。特に丘の上のレストランは、予約が取れないほどの人気でした」
(観光+グルメのセットってこと?めちゃくちゃ強いじゃない!)
私は内心色めき立ったけれど、マルタの表情は暗いままだった。
「ですが……三年前に水質汚染の噂が立ちまして」
「え?」
「この土地の水は毒だという噂が、あっという間に王都まで広がったのです。旦那様も何度も調査を依頼し安全だと訴えました。それでも、一度広がった噂は消えるどころか、隠蔽だなんだと余計に騒がれて……」
風評被害――そのせいで観光客はぱったりと来なくなり、レストランや宿も次々に閉めざるをえなくなったという。地域経済全体が被害を受けてしまい、雇用も税収も失われた。そこから一気に資金繰りが悪化したのだろう。
「セラフィーヌお嬢様はまだ小さくていらっしゃいましたから、ご存じなくても無理はありません」
三年前ならセラフィーヌは当時二歳。風評被害のことを覚えていなくてもおかしくはない。だから記憶の統合をしても、私はこの情報を持っていなかったんだ。
(でも原因が『噂』なら、ひっくり返せる可能性はあるわ)
私はぐっと拳を握った。
「マルタ、そのレストランをやっていた人は?」
「……ミーナという女性です。私の同級生でとても腕がいい料理人でした」
「ほんと!?そのひとにあえる?」
「南の丘の上に一軒の家があります。レストランは閉めてしまいましたが、二階が住居になっていますので今もそこで暮らしています」
そこでマルタは、気がかりそうに目を伏せた。
「けれど、もう料理から足を洗って何年も経ちますから……」
それでも私は、どうしても一度会ってみたかった。私はマルタに頼み込んで、ミーナのところへ連れて行ってもらうことになった。