【長編版】天才幼女セラフィーヌ、ツンデレ辺境伯様とただいま領地改革中!
 私はそれを小さい器に盛りつけて、居間(リビング)にいるエリクとエリザの元へ持っていく。

 「エリク、エリザ。ごはんだよー!セラがつくったんだよ!」

 ふたりとも、目の前の器を興味深そうに見つめている。まずはエリクを抱っこして膝の上に座らせて、小さなスプーンの先にほんの少しだけカボチャのペーストをのせる。

 「はいエリク。あーん」

 エリクは素直に口を開けて、ぱく、と小さな口が動いた。

 「たべた!」

 けれど私が喜んだのも束の間、エリクはすぐに眉を寄せるとべーっと吐き出してしまった。口から垂れたそれらが、よだれかけにべったりと落ちる。

 「ええ!?なんで!?」

 もしかしてエリクはカボチャが好きじゃないのだろうか。
 私はスプーンを持ちかえて、今度はエリザへと差し出してみる。

 「ほらエリザ、あーん。おいしいよ?」

 エリザも素直に口を開けて、ぱくりと食べてくれる。そして口を動かして――

 「べえーー」

 こちらも見事に吐き出された。

 「なんでええええ!?」

 私の叫びが居間に響き渡る。
 もう一度エリクへ差し出すも、口を固く閉ざされた。

 「あぶー」
 「きゃうー」
 「ねえ、ふたりともたべてよおーー!セラがいっしょうけんめいつくったの!」

 顔の前にスプーンを持っていっても、プイッと横を向かれる。エリザにいたっては、スプーンを持つ私の手をぺちんと叩いた。その拍子にペーストが私の頬に飛ぶ。

 「…………」

 マルタが思わず口元を押さえたのが見えた。

 「マルタ、いま笑った?」
 「いいえそのようなことは」
 「ぜったい笑った!」

 私は器の中に残ったカボチャのペーストを見て溜息をついた。
 自分でスプーンですくって食べてみると、舌の上でざらつきが残っていてなんともいえない食感だった。器の中をよく見ると、ところどころ潰しきれなかった小さな固まりが見える。

「おそらく、おふたりには飲み込みにくかったのでしょうね」

マルタの言葉に私は頷くしかなかった。

(手順通りにやればいいってわけじゃないんだよね。それで相手が満足するものができるかは、また別問題なんだ……)

 現場の作業を軽く見て、すぐ効率化やコストカットに走ろうとする経営者がいた。そのたびに待ったをかけて現場を知る大切さを説いてきたはずなのに、まさか自分が同じことをしでかすなんて。

 「……料理って、むずかしい」

 これくらい簡単だと侮っていた自分が恥ずかしくなる。
 がっくりと肩を落とすと、エリクが小さな手を伸ばして私の指を握った。エリザも反対側の指を握る。

 「ふたりとも……」

 励ましてくれているのかと思った次の瞬間、エリクがまた「あぶー」と笑い、エリザもつられるように声を上げた。

 「もう!やっぱり笑ってるでしょ!」

 焦げかけのジャムと、誰にも食べてもらえなかった離乳食。
 商品開発の初日は見事に失敗に終わった。
< 18 / 18 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
第6回ベリーズカフェファンタジー小説大賞 優秀賞をいただきました! ありがとうございました! 敏腕コンサルタントとして 数々の企業を立て直してきた私《宮川夏美》は、 ある日、職場で倒れてしまう。 そして目覚めると――五歳の幼女になっていた!? 転生したのは、 没落寸前の男爵家の令嬢・セラフィーヌ。 ボロボロの領地、莫大な借金、泣き虫な双子のお世話……と、 問題は山積み&前途多難。 そんななか後見人としてやって来たのは、 軍人上がりの辺境伯様で―― 前世のコンサルスキルを駆使して、 ちょっぴりツンデレ気質な辺境伯様と 領地改革に乗り出します! ※2025.11.20 公開
新堂さんと恋の糸

総文字数/117,371

恋愛(オフィスラブ)174ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
櫻井泉(さくらいいずみ) 梓真に憧れるデザイン雑誌編集者 25歳 × 新堂梓真(しんどうあずま) 他人を信用しないクールなデザイナー 29歳 打ち合わせに向かう途中、アクシデントでケガをしたところを 通りがかりの男性に助けられた泉。 その男性は打ち合わせ相手であり 泉にとって憧れのプロダクトデザイナー、新堂梓真だった。 取材を受ける条件として雑用係になるも 無茶な要求と冷徹な態度に振り回される日々。 けれど、仕事への一途さと思わぬ素顔を知るうちに 尊敬以上の気持ちが芽生えていることに気づいてしまう。 編集者が取材対象を好きになるのはご法度。 惹かれていく気持ちに蓋をして仕事に奮闘する泉だったが、 その先に思わぬ罠が待ち受けていた―― ※表紙はイラストACさんにお借りしました。
【2/16 番外編追加】同期の姫は、あなどれない

総文字数/109,531

恋愛(オフィスラブ)136ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
早瀬 ゆきの(はやせ ゆきの) 25歳 社会人4年目の開発エンジニア。 遠距離恋愛中の彼氏とのすれ違いに悩んでいる。 × 姫元 樹(ひめもと いつき)25歳 ゆきのの同期でインフラエンジニア。 他人に一切興味がないが、ゆきのだけは例外のようで…? ―――――*――――― 社会人4年目を迎えたゆきのは忙しいながらも充実した日々を送っていたが、 遠距離恋愛中の彼氏とはすれ違いが続いていた。 ある日電話での大喧嘩を機に一方的に連絡を拒否され 音信不通となってしまう。 落ち込むゆきのにアプローチしてきたのは『同期の姫』だった。 「…姫って、付き合ったら意外と彼女に尽くすタイプ?」 「さぁ、、試してみる?」 クールで他人に興味がないと思っていた同期からの思いがけないアプローチ。 動揺を隠せないゆきのは、今まで知らなかった一面に翻弄されていくことに――― じれじれ恋愛ストーリーです。 ※表紙はイラストACさんにお借りしました。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop