【長編版】天才幼女セラフィーヌ、ツンデレ辺境伯様とただいま領地改革中!
 確かにその通りだ。しかも相手は悪徳業者、誠実に交渉に応じる可能性は低い。

 (信用を取り付けるにも担保にできるのは土地くらい。でもそんな相手に土地を渡したら詰むよね……)

 どの程度法律が機能しているか分からない異世界で、現代の感覚を持ち込むのは危険だ。どさくさまぎれに土地を奪われてしまったら、取り返しがつかなくなる。

 「手っ取り早く借金を帳消しにするなら、国が介入することだ。そうすれば借金は無効になる」

 (それって、要は国有化するってこと?)

 日本でいえば、国に救済を求めて会社更生法を適用するようなものだ。
 そうすれば再建は容易になるかもしれないけれど。

 「まって、そうなったら……」
 「あぁ、この領地は没収されて爵位は剥奪。統治権を失うことになる」

 その言葉に、胸の奥がぎゅっと痛む。

 利息の違法性を突けば、借金を減らせる余地はあるのに。けれど、ここでは私は五歳の子どもだ。それをできるだけの権限も説得力も持っていない。

 (代々守って受け継いできたものが、すべてなくなってしまうの?)

 私は、壁に飾られていた肖像画のことを思い出していた。
 セラフィーヌが亡き両親と過ごした思い出の家。この家が幸せだった頃の記憶。
 統治権を失って爵位を剥奪されれば、この屋敷にも住めなくなる。それにエリクとエリザ――あの小さな双子とも離れ離れになってしまうかもしれない。

 私は小さく唇を噛んだ。

 「……それはだめ。お父さまとお母さまのおうち、セラがまもりたいの」

 声は幼くても、言葉はもう五歳児のものではなかった。
 セラフィーヌと私――二つの記憶が溶け合って、自然と零れた本音だ。

 レオンハルトは驚いたように目を見開いてから、ほんの一瞬だけ表情を柔らかくする。

 そして――大きな手がそっと、私の頭に置かれた。

 「安心しろ。借金問題も、領地も――両方解決できる方法がある」


 それは、これまでで一番人間味のある声だった。


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